2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

職員会議で採決禁止

都教育庁通知 管理職の権限強化


 東京都教育庁は十三日、職員会議で「挙手」「採決」などの方法で、教職員の意思を確認する運営を行ってはならないとする中村正彦教育長名の通知を二百六十三校の都立学校長に出しました。学校運営における都の管理強化は教育機能の崩壊につながるとして、現場の教師、教育関係者から批判の声が上がっています。

 「学校経営の適正化について」とする今回の通知は、企画調整会議や職員会議などの運営について「一層の適正化を図る」よう求めています。その内容は、校長、副校長、主幹で構成される企画調整会議が、学校経営の「中枢機関」で、「職員会議の場で議論し、教職員の意向を挙手等で確認するような学校運営は許されない」というものです。

 職員会議は校長の補助機関と明文化した二〇〇〇年の学校教育法施行規則を受け、都教育庁は〇一年、「校長が決める事項を、職員会議が制約するような運営で意思決定してはならない」との通知を出しました。今年一月に都立校にその後の状況を報告させたところ、十数校で校務に関する内容を職員会議での挙手や採決で決めていたことが判明したとし、また学校経営支援センターが四月に始動したことも踏まえ、今回の通知を出しました。

 都立高校で日本史を教える男性教師(57)は、このような通知は「現場の意欲をそぐだけ。一部管理職の決定で、学校運営がうまく行くはずがない」と批判しています。


管理あって教育なし/合議制こそ

 山田功氏(教育基本法全国ネットワーク事務局長)の話 新学期は「さあやろう」という一年のスタートを切る一番大事な時です。そこへ「職員会議で挙手や採決をしてはいけない」などという通知を都教委が持ち込むというのは、まさに「管理あって教育なし」という、自らの姿勢を都民に示してしまったのではないでしょうか。

 教育の創造は、日々苦闘している子どもとの接点から生まれてくるもので、その中で職員会議はよりよい教育を生み出す「民主的な協議の場」という教育の原点です。このことを都教委はまったく理解していません。

 ある元校長は「議論なくして活力なし。この通知は『教師はものを考えるな、言うな』ということ。教育の荒廃はここまできたか」と、警鐘を鳴らしています。子どもと教職員の自主性、自立性なくして、どんな教育の活性化も図れません。

 三輪定宣氏(千葉大学名誉教授)の話 この通知は、極めて異例、異常です。職員会議は、教育の専門家として教育権限の独立性(学校教育法二八条六項)を保障された教員が、学校経営の合意形成を図るために存続する合議制機関であり、その機能の充実こそ学校経営適正化の方向です。

 職員会議では、協議等のほか、必要に応じて挙手、採決を行い、教員の意向、意見分布等を明確にすることは、教員間の合意形成はもとより、校長の適正な判断、意思決定のためにも必要不可欠です。

 職員会議における挙手、採決の禁止は、その形がい化を助長し、学校の闊達(かったつ)な教育活動を妨げ、生徒の人間形成を阻むことになります。


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