2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

アイフル 悪質な貸し付け・取り立て

借り手「自殺 考えた」


 「アイフル」の全店舗を業務停止――。財務省近畿財務局はサラ金大手に対し、過去に例がない重い処分に踏み切りました。経済・生活苦の自殺者が年間八千人にのぼるなか、増大する多重債務者を自殺にさえ追いやる悪質な貸し付け・取り立てが横行しています。アイフルの取り立ての実態に迫りました。(井上 歩)


 「死んだほうがましかな、楽なんや、と思いました。なぜここまでせなあかんのかと。でも家族あるし、とか思いながら…」

 京都市の自営業の男性(47)は、アイフルに強引な取り立てをされ、金策に走り回ったときの気持ちをこう振り返ります。

「知り合い回れ」

 男性がアイフルからの融資話にのり、自宅不動産を担保に四百万円を借りたのは二〇〇一年。仕事が減ったこともあり、男性は二〇〇三年八月ごろには返済不能になりました。

 同年十一、十二月ごろには、アイフルから厳しい取り立てを受けました。「どこか知り合いのとこへ行け」。夜、アイフル社員が自宅に取り立てにきて、友人知人から借金して返済にあてるように迫りました。男性は、バイクで雪の中を一時間近く走りまわり、友人宅の近くから友人に電話しましたが、借金は断られました。

 「だめでした」

 「もう一度いけ」

 午後十時を過ぎて取り立て人と電話が通じなくなり、男性は帰宅。「手が凍傷気味で、かなりひどくなりました」と男性。当時は家具を売って生活する状態で、自殺を「真剣に考えていた」といいます。男性は結局、自己破産し、いま生活再建中です。

 男性はこういいます。「アイフルのCMで『どうする? アイフル』っていうでしょ。自分がいわれるように感じるんです。『どうする?』って。きついですよ。この会社は許せない。できることなら訴えてやりたい」

7倍以上の請求

 愛媛県の四十代の男性会社員は昨年八月、アイフルの取り立てで精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を求める訴訟を起こしました。アイフルがこの会社員にかけた取り立て電話の内容がテープに記録され、弁護士がそれを公開しました。

 「工面してください。二万五千円。○○さん本当に。本当にちょっと! ちょっと恨み買わんほうがいいですよ、本当に」

 「今日いるんですよって言っているんですよ! お金ができんのは動かないからでしょ! だれが畳の上で寝ていてお金がふってくるんですか! お金を用意してくださいといっているんですよ!」

 二〇〇四年十二月ごろ、会社員は連日、こんな乱暴な言葉で返済を迫られたといいます。アイフルが返済を求めたのは百八十万円。しかし、利息制限法の金利で計算し直した、実際に有効な債務は二十三万円程度でした。

 昨年四月、多重債務問題にとりくむ弁護士らが「アイフル被害対策全国会議」を結成しました。同対策会議は、行政処分の申し立てや提訴、集会を重ね、アイフルの問題を告発してきました。

 その一つの集会で、アイフル元社員の女性が、自分の過去を告白する場面がありました。「多重債務者にも貸せるだけ貸し付け、その先にどうなるかなどみじんも考えることはありませんでした」「体調の悪い日、気分がすぐれない日などはストレスを発散するように顧客に暴言を浴びせました」

 「客が自殺したとの連絡に、最初は目の前が真っ暗になった。その後、幾人もの顧客の自殺の連絡を受けた時には罪悪感もなく、死ぬほど思いつめることはないとしか感じなくなった。一年余りでこれほど人間が変わるのが消費者金融なんです」

高金利を下げよ

 被害対策会議がとりくんだ訴訟提起や集会での告発では、悪質な事例がいくつも報告されました。

 ▽認知症の男性を病院から連れ出し、連帯保証人にした上、男性の自宅に根抵当権を設定。男性側が登記抹消などを求めた訴えをアイフルは認諾。

 ▽神戸市の七十代女性の家を訪れ、女性が「生活保護をもらっていて、お金がない。弁護士にお願いしている」といったのに五千円を取り立て。女性側が提訴。

 ▽入院中の末期がん患者の見舞金を病室から取り立てていったと鹿児島県の市役所職員が集会で報告――。

 同対策会議事務局長の辰巳裕規弁護士は「全店処分されたように、この問題は一店舗一従業員ではなく、アイフル全体が起こしている構造的被害だ」と話します。

 貸金業をめぐっては制度見直し議論が金融庁の懇談会ですすめられ、今年中に制度と上限金利の見直しがされます。辰巳弁護士はこう指摘します。

 「アイフルに限らず、消費者金融は経済的に困窮した層を対象に高利・過剰融資をしており、多重債務に陥った人には過酷な取り立てを行うというサラ金『三悪』が、いまもあらたまっていないことを今回の処分は示した。消費者金融は利用者の生活の安定を前提にはじめて社会的に認められるもので、利用者の生活、生存を守る立場から制度設計を考えるべき。まずは高金利の引き下げが急務です」


その実態

・電話で「恨み買わんほうがいいですよ」

・認知症の男性を連帯保証人、自宅に根抵当権

・生活保護を受ける女性から5千円取り立て

・入院中の末期がん患者の見舞金を取り立て


 アイフル 一九七八年設立で東証一部上場のサラ金会社(本社・京都市、福田吉孝社長)。二〇〇五年三月期の貸付金残高は一兆四千七百十七億円、営業利益は三千四百六億円。アコム、武富士と並ぶ大手。グループ企業に信販のライフ、事業者金融のビジネクストなどがあります。融資原資となる借入金先には、住友信託、みずほ信託、UFJ(現三菱東京UFJ)など大手銀行が名を連ねています。米経済誌『フォーブス』の世界長者番付(二〇〇五年)で福田社長および福田家は八十位(日本人二位)に入っており、経営陣は大儲けをしています。


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