2006年4月14日(金)「しんぶん赤旗」

主張

医療大改悪

保険がきく治療切り縮めるな


 小泉内閣の医療制度「改革」法案は、高齢・重病の人々の負担増や療養病床の削減とともに、保険で受けられない医療を拡大する「混合診療」の本格的導入を盛り込んでいます。

 これまで、高額の医療費を請求される「混合診療」は、差額ベッドなど例外的にしか認められていませんでした。ところが、法案は、「高度医療技術その他」や「生活療養」といった名目で、「混合診療」を拡大しようとしています。

混合診療の本格導入

 「混合診療」の本格的導入について、小泉首相は国会で次のように説明します。

 「今回の見直しは、保険の対象外の先進的医療や海外で承認されている医薬品を早期に少ない負担で利用したいとの国民の要請にこたえて、安全面に配慮しつつ、全額自己負担であったものの一部を保険給付の対象とするものであり、国民が安心して医療を受けることができる公的医療制度を損なうものではないと考えております」(四月六日の衆院本会議)

 ここには大きなごまかしがあります。

 小泉首相は「全額自己負担」から「一部保険給付」の対象となるので負担が軽減されるかのようにいいます。しかし、先進的医療や海外で承認されている医薬品は、そのまま保険外とすることには変わりありません。

 公的医療保険の根幹は、必要な医療はすべて保険で受けられることです。これまで人工透析や眼内レンズ、臓器移植など、最初は保険のきかない高額の医療であっても、やがて保険のなかに組み込まれてきました。

 そうすれば、「全額自己負担」から「全部保険給付」の対象になり、お金のあるなしにかかわらず、安心して必要な医療を受けることができます。

 小泉首相には、先進的医療や海外で承認されている医薬品を早期に保険に組み込んでいくという考え方がまったくありません。

 保険のきかない医療を拡大する「混合診療」の本格的導入は、必要な医療は保険で受けられるようにするという、公的医療制度を壊す以外の何物でもありません。

 「国民の要請」といいますが、先進的医療などを早期に保険適用すれば、“負担を軽減してほしい”という問題は解決します。

 「混合診療」の全面解禁を強く要求してきたのは、保険料負担を軽減したい日本の財界と、もうけ口を拡大したい米国の医療業界・保険会社です。小泉首相が「国民の要請」を持ち出すのは、日米財界の圧力を隠すためです。

 法案は、「生活療養」という名目で、療養病床に入院する七十歳以上の人を対象に、食費と居住費を保険給付から外しています。

医療に格差持ち込むな

 保険給付を切り縮めれば、所得の違いが医療の格差につながります。

 すでに、昨年十月実施の介護保険改悪で、食費・居住費を保険から外したことによる影響が出ています。全国保険医団体連合会の調査によると、少なくとも十七都府県で五百十九人が介護施設からの退所を余儀なくされています。多くが、医療を必要とする人たちです。

 「保険証一枚あれば、必要な医療はすべて受けられる」というのが、日本の医療制度のよいところです。

 お金のあるなしで、医療に格差を持ち込む大改悪を許さない声をさらに広げていくときです。


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