2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」
解説
教育基本法改悪の与党合意
内心の自由を侵し愛国心の強制招く
十二日の教育基本法改悪案をめぐる自民、公明両党の合意内容には、大きな問題があります。
「国」には統治機構を含まないことや、他国や国際社会を尊重することが確認されたからよいというのが「愛国心の明記に慎重」とされてきた公明党の言い分です。しかし、いろいろ修飾語をつけたとしても、法律で「愛する」という心のあり方を定めること自体、内心の自由を侵すものです。
この条文は「教育の目標」に盛り込まれますが、目標となればその達成度を評価する必要が生まれ、東京都などのように「日の丸・君が代」を強制する例や、愛国心を通知表の項目に加えた福岡市のような例が、全国にひろがる恐れもあります。
教育基本法改悪の策動は、制定直後から主に自民党内部に根強くありました。ここ数年は、二〇〇〇年に「教育改革国民会議」(首相の私的諮問機関)が教育基本法の見直しを提言し、文科相の諮問を受けた中央教育審議会が〇三年三月に同じく見直しを答申するなど、政府も加わって改悪の動きが加速してきました。
「学級崩壊」「いじめ・不登校」などの教育問題や、経済のグローバル化など社会情勢の急激な変化が、その口実にされています。しかし、これらはいずれも現行の教育基本法で十分に対応可能です。改悪には、(1)愛国心や道徳心などを基本法に盛り込もうとする国家主義的な狙い(2)競争や外部評価などで教育の“活性化”を図る新自由主義的な狙い(3)教育振興基本計画の策定などで国の教育への統制を強める狙い―などが込められています。
具体的な法案づくりは、〇三年五月からは「与党・教育基本法に関する協議会」(〇四年一月に「与党・教育基本法改正に関する協議会」に改称)と、その下に設置された「同検討会」にゆだねられてきました。
検討の中身は非公開で、完全な“密室”で作業が進められてきました。“与党の賛成を得ないことには法案は通らないが、途中経過を表に出すと議論が混乱し、まとまらなくなる”というのがその理由です。しかし、教育は政府や与党が「あるべき姿」を決めるものでしょうか。それこそ戦前への逆戻りです。
今回の改悪の動きは、基本法制定時の原点をくつがえし、「一人ひとりの子どもの育ちを大切に」という多くの国民の願いにも反するものです。急速に反対の世論を高める必要があります。(坂井 希)