2006年4月9日(日)「しんぶん赤旗」
企業のCM「ニュース」として放映
全米77局
米民間組織が実態告発
【ワシントン=山崎伸治】ニュース報道だと思って見ていたテレビが、実は企業の宣伝だった―公正な報道の実現を主張する米国の民間組織「メディアと民主主義のセンター」は六日、大企業の依頼で宣伝会社が作製したビデオをテレビ局が「ニュース」として放映している実態を告発する報告書を発表しました。
同センターが二〇〇五年六月から〇六年三月まで調査した結果、全米七十七のテレビ局が三十六種類の「ビデオ・ニュース・リリース」(VNR)や「サテライト・メディア・ツアー」(SMT)を使用していたことがわかりました。
VNRは、企業などが配布するビデオ版の宣伝資料です。リポーターが現場におもむき、視聴者に語りかけるなど、ニュース仕立てになっています。SMTは、企業がおぜん立てをして、衛星通信を使ったインタビューを提供するというものです。
報告書によると、判明した八十七件のVNR使用について、ほとんどのテレビ局がVNRに基づくものであることを隠し、あたかも独自に取材した「ニュース」のように放映していました。
そのうち三十一件は、VNRをそのまま使用。その他は、独自に取材した情報を盛り込んで作り直したり、放送局のリポーターが登場したりしていましたが、元のVNRの言い回しをそっくり繰り返していました。
三十六種類のVNRのスポンサーはいずれも、ゼネラル・モーターズ(自動車)、ファイザー(医薬品)、インテル(コンピューター機器)などの大企業です。このうちパナソニックやナムコなどコンピューターゲーム会社がスポンサーとなったVNRは昨年末、九局で放映されました。女性評論家がクリスマスプレゼントのために、子ども向けのコンピューターゲームを評価するというもので、スポンサーが発売しているゲームを推奨するという内容でした。
VNRをめぐっては昨年、米国務省が作成した「ニュース」を放映していたことが問題になりました。
この背景には地方のテレビ局が財政難から、十分な独自取材ができなくなっているという実態があります。