2006年4月8日(土)「しんぶん赤旗」

首相去就めぐり混迷

米英“干渉”に批判の声

イラク


 【カイロ=松本眞志】イラクでは、次期正式政府の首相候補であるジャファリ移行政府首相の去就をめぐり、政局の混迷が続いています。昨年十二月の国民議会選挙で最大会派となったイスラム教シーア派政党連合「統一イラク同盟」内での主導権争いが直接的な原因ですが、米英による干渉が事態をより複雑にしています。

 ジャファリ氏は、「(首相候補になったことは)民主的制度によって達成された決定だ。われわれはイラク国民の声を尊重しなければならない」として、高まる退陣要求をはねつけました。同氏の出身政党のダアワ党、シーア派指導者サドル師のグループも降板を拒否し続けています。

国民の生活深刻に

 一方、二月に行われた「統一イラク同盟」内の首相候補選出投票でジャファリ氏に一票差で敗れたアブデルマハディ移行政府副大統領は、ジャファリ氏がイスラム教スンニ派やクルド人勢力の支持を失ったことなどを理由に、「ジャファリ氏は退陣すべきだ」と主張しています。

 汎アラブ紙アッシャルクアルアウサト四日付は、「“同盟なき”統一イラク同盟」と題する記事で、「同盟内で首相の地位をめぐる党派や指導者間の対立が進行している」「統一イラク同盟は、現在のイラクの政治危機の主要な原因の一つである」と指摘。政治の混乱による行政機能の麻痺(まひ)がイラク国民の生活を深刻にしているとし、「国家権力の欠如によってテロが横行し、政治の空白が無秩序を許している」と述べています。

 首都バグダッドの病院に勤務するシーア派教徒の男性、ハリル・イブラヒムさん(40)は「多くのイラク人にとって最優先課題は、治安と生活を改善すること。政治指導者には、自分たちの利益ではなく、イラク国民を第一に考えてほしい」と本紙の電話取材に語りました。

各派に圧力をかけ

 このような状況下、米国のライス国務長官と英国のストロー外相が「情勢打開」のために二日から三日にかけてイラクを訪問し、組閣問題に決着をつけるよう各派に圧力をかけました。これに対し、イラク国民やアラブの声は冷ややかです。

 イラク人ジャーナリストのアラーウ・ハッダード氏(42)は「彼(ジャファリ氏)の去就を決定するのは米国ではない」と語り、バグダッドの自営業者、アンワル・オビディさん(44)は「米国が政府樹立に干渉するのは、米国の利益に奉仕する政府をつくるためだ」と断言しました。

 アラブ首長国連邦紙アルハリージ四日付は、「イラクの問題はイラク人自身が解決すべきであり、米国の干渉はイラク情勢を複雑にする」とのイラク国民議会のクルド人議員、マフムード・オスマン氏の声を紹介しています。

 バーレーン紙アハバル・アルハリージ五日付は、「ライス氏は、イラク侵略を国際法違反の大罪と知りながら、米国の行為は犯罪ではなく(戦術上の)“過ち”だと呼び、サダム・フセインの転覆は正しい判断だったと主張している」と批判したうえで、「イラク国民が直面しているすべての災難は、この米国の犯罪の結果である」と指摘しました。


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