2006年4月8日(土)「しんぶん赤旗」

民主代表選びの1週間

“対抗の足場” どこに


 前原誠司代表が「偽メール」事件の責任をとって、三月三十一日に辞意表明してから約一週間。日本のマスメディアは、民主党代表選に席巻されました。

テレビジャック

 新代表を選出した七日の両院議員総会をNHKはじめ民放も複数局が生中継。前日には小沢一郎、菅直人両候補が四つのテレビ番組に生出演し、「テレビジャック」(「読売」七日付)といわれるほど。全国紙も、連日一面トップで報じ、社説、特集などで、「国民的関心事」に仕立て上げました。

 自民党からは、「ほんの少し前まで、民主党の凋落(ちょうらく)が言われたが、このところ非常に存在感を増している」(山崎拓・前副総裁)と警戒する声も出ています。民主党の渡部恒三国対委員長は「野党の党首選挙がこんなに大きく取り上げられているのは、生まれて初めての経験だ」と満面の笑みです。

「メール」で自滅

 問題は、民主党代表選で何が問われなければならなかったのか、です。

 代表選の発端となった「偽メール」事件は、政権与党の問題点を追及する際、確かな事実と根拠をもってのぞむという野党のあり方を問いかけました。同時に、任期途中で代表が四人連続して辞任した不安定性の根本は何か、も重要でした。

 前原執行部は「対案路線」と称して自民党と「改革」競争を展開、「中国脅威」論や集団的自衛権の行使のための改憲論など自民党よりタカ派とみられる方向を打ち出しました。通常国会ではライブドア事件をはじめ「四点セット」の「対決」路線に転じましたが、政策論争する確固たる立場がなく、「偽メール」事件で“自滅”しました。「日米同盟最優先でも『新自由主義』路線でも、自民党と基本的に違いがないから、常に“両極”にゆれる」(日本共産党の志位和夫委員長)のです。

 つまり、自民党政治のどこに問題があり、どこを正すのかという対抗の足場が問われたのです。

 ところが代表選の決意表明で小沢氏は「政権交代こそが日本の真の構造改革だ」とのべ、菅氏も「民主党の危機は二大政党制という制度自体の危機」と強調するなど、対抗の足場より「二大政党制の危機」を前面に押し出しました。

「民主育てる」?

 メディアはこうした点を検証すべきでしたが、報道の主流は両陣営の多数派工作に終始しました。

 それどころか、「この党を、政権交代可能な二大政党制の一翼を担えるように鍛え直すこと。それは…日本の民主主義にとって重要な意味を持つ」(「朝日」六日付社説)という論調までありました。小選挙区制導入で、人為的に「二大政党制」をつくろうとしたものの、民主党のあまりの体たらくに「育成努力」も必要だと言いだしたのです。

 そこにあるのは、国民の立場から政治に何が求められるのかというマスメディアの原点の放棄です。

 民主党代表選のけん騒の一方で、公共サービス切り捨ての「行革推進」法案や医療改悪法案の審議がすすんでいます。米軍基地の強化・恒久化をおしつける在日米軍再編も大詰めです。いま、野党に問われるべきは、こうした小泉・自民党政治の害悪―極端な大企業中心主義と貧困・格差の拡大、侵略戦争の正当化、アメリカいいなり政治―に立ち向かう確かな足場です。その立場をもったたしかな野党こそ求められています。(藤田健)


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