2006年4月8日(土)「しんぶん赤旗」

主張

代用監獄

えん罪の温床を永続化するな


 「ダイヨーカンゴク」を知っていますか――。「カローシ(過労死)」とならび、国際的に通用する日本語になった、世界の非常識です。

 逮捕された被疑者が警察署内で身柄を拘束される「代用監獄」は、自白強要と冤罪(えんざい)の温床とされ、その解消が強く求められてきました。ところがこれに逆らい、代用監獄制度を永続化する法案(刑事収容施設・被収容者処遇法案)が、いま衆院で審議されています。

虚偽の自白を強制

 逮捕され、裁判所が勾留を決めた被疑者は、警察の留置場ではなく、法務省が管轄する拘置所に身柄を移すというのが法の原則です。現実には、拘置所に移される被疑者は少なく、ほとんどは警察留置場に長期間留め置かれます。一九〇八年に監獄法ができたとき、拘置所の数が足りないという理由で、「警察の留置場を代用することができる」とした規定によるもので、「代用」監獄と呼ばれるゆえんです。

 警察留置場は、外からの監視もチェックもない密室です。被疑者は睡眠、食事、運動、入浴から面会、差し入れまで、生活や行動のすべてを警察の管理・規制のもとにおかれます。警察はその権限を使って、自分たちが思い描いた通りの自白を強制します。自白偏重の裁判を支えるもので、警察にとっては便利な制度です。しかし、無実の人に虚偽の自白をさせることで、数々の冤罪事件を引き起こしてきた大本です。

 国会審議のなかで警察庁は、「犯罪捜査を適正、迅速に遂行するために、警察留置場を存続させることが現実的」と答えています。語るに落ちるとはこのことで、被疑者を警察の手元におき、「迅速」に自白を得られる制度を、なんとしても手放したくないというのが警察の本音です。

 被疑者の人権を守るため、捜査機関と身柄拘束施設を分離するというのは、世界共通の原則です。日本の代用監獄制度は、国際人権連盟、国際人権(自由権)委員会、国際法曹協会などから厳しく批判されています。日本政府が代用監獄を廃止することは、国際的な要請でもあります。

 警察庁は、法案に(1)留置業務に従事する警察官は犯罪捜査に従事しない(2)警察本部に「留置施設視察委員会」を設ける―ことで「人権を尊重した」といいます。

 警察庁はこれまでも、「一九八〇年から捜査部局と身柄管理部局(看守係)を分離したので、人権侵害はもうおこらない」と主張してきました。しかし、その後も冤罪事件はあとをたちません。同じ警察のなかで係を分離しても無意味なことは検証済みです。視察委員会の設置も、警察の推薦名簿で選任されている都道府県の公安委員が視察委員を指名する制度では、中立・適正な委員指名がおこなわれる保障はありません。

きっぱり廃止に進め

 政府は代用監獄恒久化のための「拘禁二法案」を八二年、八七年、九一年と三度にわたり提出しました。国民的な批判で、いずれも廃案になったにもかかわらず、再三再四、提出をくりかえす態度は異常です。

 政府は治安の悪化を提出理由のひとつにしますが、治安の維持のためには人権の制限も容認されるという議論そのものが本末転倒です。国民の治安にたいする不安を逆手にとって、代用監獄を永続化しようというやり方は、公正を求められる司法改革の流れにも逆行します。法案は廃案にし、代用監獄そのものをきっぱり廃止する方向で、改革をすすめるべきです。


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