2006年4月7日(金)「しんぶん赤旗」
ベトナム戦争 枯れ葉剤
国こえ被害者連帯
国際会議 参戦国からも参加
【ハノイ=鈴木勝比古】米国のベトナム侵略戦争の参戦国とベトナム双方の枯れ葉剤被害者、科学者が初めての国際会議を三月末にハノイで開催、国際社会に枯れ葉剤・ダイオキシン被害の問題と被害者の救済に関心をもつよう訴えるアピールを発表しました。
ダイオキシン被害救済へ
三月二十八、二十九の両日に開催された会議にはベトナム、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダ(非参戦国)の六カ国が参加。ベトナム枯れ葉剤被害者の会のマイ・テー・チン広報担当責任者が被災者の救済を訴え、ベトナム枯れ葉剤被害者による三十の米企業に対する訴訟の控訴審(米国で近く開始)への支援を呼びかけました。
ベトナムの被害者百人は昨年、米ニューヨークのブルックリン連邦地方裁判所に、枯れ葉剤を生産し、これを米軍に提供した米企業三十社に対して損害補償と汚染土壌の除去を求める訴訟を起こしましたが、同裁判所はこの訴えを却下しました。現在、控訴審の準備が進められており、五月に始まることになっています。
国際会議では枯れ葉剤に含まれたダイオキシンの深刻な被害が紹介されました。多くの参加者が「ダイオキシンは人間がこれまでに知ったもっとも危険な化学物質」と告発し、「七代まで被害が及ぶ」(オーストラリアの元参戦兵)、「カムラン湾周辺には人間以外の生き物はゴキブリだけになった」(米国の元参戦看護師)などの発言もありました。
科学者からは、枯れ葉剤が生態の破壊と同時に人体に多くのがんを引き起こす原因(韓国科学者の統計で十六種類)となり、後継世代に先天性奇形児を生み出しているなどの研究結果が発表されました。
一九九六年に米国のクリントン大統領(当時)は参戦米兵の枯れ葉剤被害を認め被害者とその子どもの被害についても補償するよう指示しました。その後、ニュージーランド、オーストラリア政府も、自国の参戦兵士の訴えを検討し、解決に努力するとの声明を出しました。
韓国のソウル控訴裁判所は一月二十六日、参戦韓国兵の訴えを認めて、米企業のダウおよびモンサント社に対し六千七百五十人の元韓国兵に六百三十億ウォン(約七十五億円)の損害補償を命ずる判決を下しました。
しかし、米政府は米軍がベトナムに散布した枯れ葉剤がベトナムの住民に重大な被害をもたらしていることをまだ公式に認めていません。
枯れ葉剤 米軍はベトナム侵略戦争で解放勢力の隠れる樹木の葉を枯らし、食料を断つなどの目的で、一九六一年から一九七一年まで枯れ葉剤などの化学物質八千万リットルを散布しました。オレンジ色の容器に入っていたため「オレンジ剤」とも呼ばれます。猛毒ダイオキシンが含まれており、ベトナムの広範な地域で人体や環境に深刻な被害をもたらしました。参戦国の米国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの兵士にも被害が出ました。