2006年4月6日(木)「しんぶん赤旗」

教科書問題

戦犯政治受け継ぐ安倍発言

82年官房長官談話を否定


 安倍晋三官房長官が歴史教科書問題に関連し、一九八二年の「教科書書き換え問題」で「『侵略』を『進出』と書き換えられた事実はなかった。(当時の官房長官が謝罪したのは)結果として大変な誤りを犯した」(二日、フジテレビ系)と述べたことが波紋を広げています。

 現職の官房長官が、アジア諸国に公約した政府見解を否定したのですから、ことは重大です。

 八二年八月に、当時の宮沢喜一官房長官が談話を出したのは、右派勢力による教科書攻撃のなかで、中国への侵略を「進出」と書き換えさせたことなどが深刻な外交問題になっていたからです。中国での南京大虐殺(一九三七年)や朝鮮の三・一独立運動(一九一九年)の記述をめぐっても、中国や韓国などから批判が相次いでいました。

反省投げ捨て

 日本の侵略戦争に対する反省が問われたからこそ、当時の官房長官談話は、日韓共同コミュニケ、日中共同声明で述べた過去への「反省」に言及。「アジアの近隣諸国との友好、親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正する」と述べたのです。

 この談話を否定することは、侵略戦争への反省を投げ捨て、アジア諸国との友好関係に重大な障害を持ち込むことになります。

 もともと、安倍氏の主張は、当時から『諸君!』や「サンケイ」といった右派メディアが、さかんに言いたてていた主張です。八二年の高校教科書の検定をめぐって、新聞各社は、「華北に侵略」との記述が「進出」に変えられたと報道。後に検定による書き換えではなく、もともと「華北に進出」と書いていたことが判明した一事をもって、「侵略」を「進出」「侵入」などと書き換えさせたことがまったくなかったかのようにいう論法です。

 しかし、一九五〇年代以降、政府は、学習指導要領の改定を通じ、中国への侵略を「日本の大陸進出」と言い換えるなど、日本の侵略戦争を覆い隠す方針を打ち出し、教科書会社、執筆者に「言い換え」を強要しました。八〇年代になっても政府の方針は変わらず、三・一独立運動を「暴動」と書いたり、朝鮮人の強制連行や、日本軍による沖縄住民虐殺の記述が、削除の憂き目にあってきました。

事実隠す自民

 安倍氏らが「誤報」とした問題も、こうした強要に教科書会社、執筆者が委縮した結果にほかなりません。侵略戦争の事実を覆い隠してきた自民党政治の戦犯性こそ問題です。

 靖国問題をはじめ、今、歴史認識問題で問われているのは、侵略戦争の正当化をきっぱりやめ、政府が公式に表明してきたアジア諸国への「植民地支配と侵略」に対する反省を、学校教科書に誠実に反映させることです。(N)


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