2006年4月2日(日)「しんぶん赤旗」
「報告書」から見えたもの
民主「偽メール」問題
民主党の「偽メール」問題で、同党の検証チームが三月三十一日発表した「報告書」。前原誠司代表と執行部の総退陣にまで発展した「偽メール」騒動をめぐり、報告書から見えるもの、見えないものを検証しました。
真相解明を放棄
だれが、何のために「偽メール」を作ったのか――。「報告書」では核心部分がまったく明らかになっていません。「『情報提供者』の存在を含め、『メール』の作成者は不明であり、その調査は不可能である」と結論づけ、事実上、真相解明を放棄しています。
「報告書」によれば、永田寿康衆院議員(辞職願提出)も「情報仲介者」とされる西澤孝氏も、「メール」は「ライブドアの元社員が社内メールを持ち出した」としていました。
しかし、永田氏の国会質問直後には「情報提供者」とされた元ライブドア社員で大手企業の系列会社に在籍しているという人物は、「在籍していないことが判明」していました。
では、だれが作ったのか。同党「検証チーム」に対して西澤氏は、メールは元社員から直接入手したのではなく、「私(西澤氏)の会社関係の」A氏を通じて得たと言い出しています。「事情聴取メモ」には西澤氏の伝聞や推測がそのまま書き連ねてあるだけです。
予算審議の最中に一カ月半にわたった大騒動の真相は、民主党自身の調査では国民には分からずじまいです。
追及のあり方は
国政の場で確たる事実に基づいて追及するのが政党として当然のあり方です。
報告書によると、永田氏は、西澤氏に個人的な心証から「全幅の信頼を置いて」いました。
その結果、西澤氏の説明を「鵜呑(うの)みにして」、自身の質問前に「『情報提供者』と接触する努力すら行わなかった」と書いています。
口座番号を得られていない状況で、衆院予算委員会で「口座情報を得ている」などと虚偽の質問をしました。
事前チェックも野田佳彦国対委員長(当時)が「情報提供者」との面会やベテラン議員との相談を指示したぐらいです。報告書では「情報管理の徹底を図るため、『情報』の確認作業を永田議員一人に委ねた」ことが、集団的な吟味を阻んだなどとしています。事実上永田氏に丸投げしていたのです。
チェック能力ない
民主党の対応で問われるのは、「メール」の「確証」を得ないまま、党全体で“追及”に突き進んだことです。
前原代表は三月三十一日の記者会見で、辞任を検討し始めたのは二月二十日だとのべています。野田国対委員長から「(メールが)本物でない可能性が高い」ときいたからとのべました。なのに、なぜ二日後の党首討論で前原氏は「メール問題を含め、さまざまな情報から資金提供がなされたのではないか、そういう確証を得ている」と明言したのか。
報告書は、「『確証』があると発言したが、終了後のぶら下がり取材において『言葉が間違っていた』と述べた」と言い訳しています。しかし、党代表の国会での発言が「間違っていた」ではすみません。
もう一つ問われるのは、「メール」が偽物である疑いが強まったときに、なぜ方針転換ができなかったのかです。
報告書は、永田氏を通じての西澤氏とのやりとりが迷走する様子を書き連ねています。二十日の幹部協議を「早期の方針転換に向けた大きな分岐点」と指摘しましたが、永田氏や西澤氏の発言にふりまわされただけで、「『疑惑はあるはずだ』という期待を最後まで捨てきれなかった」としています。党としてチェックする意思も能力もなかったことを示しています。
“金で情報を買う”
報告書では二月十九日になって、西澤氏が永田氏に「情報提供者がメールの電磁的データをコピーしたハードディスクを売ってもいいと言っている」といいだしたとしています。
それを受けて永田氏が野田氏に、「自分で一千万円程度は用意できる」と述べ、野田氏は「必要なら党でそれくらいは何とか用意できる」と返答。永田氏は西澤氏にその条件で「情報提供者」と交渉に入りたいと伝えたといいます。
西澤氏は、「経済的な負担は自分で賄うから心配するな」と申し出を断り、野田氏も党顧問弁護士の助言を受け、ハードディスク購入交渉を断念しました。
しかし、“金で情報を買おう”としたことは事実です。