2006年3月31日(金)「しんぶん赤旗」
主 張
六ケ所再処理工場
危険な核燃料サイクルやめよ
日本原燃は、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の本格的な試験運転(アクティブ試験)の実施へ、青森県との安全協定を締結しました。今日にも運転を強行します。
これは、来年八月の操業にむけて四百三十トンの使用済み核燃料を再処理し、四トン程度のプルトニウムを取り出す事実上の操業運転です。日本で初めての大規模なプルトニウム生産になります。その危険性に多くの県民が不安を抱き、プルトニウム保有が国際的にも懸念されています。運転は中止すべきです。
重大事故がたびたび
再処理工場は、原発の使用済み燃料から硝酸と有機溶剤を使ってプルトニウムを分離します。極めて強い放射能を溶かし出すため、臨界事故や火災、爆発あるいは配管等の腐食による事故も起こりやすい、危険性の高い施設です。
再処理技術は、もともと軍事用のプルトニウムを回収するために開発された技術を商業用に転用した、原発以上に危険で未成熟な技術です。アメリカをはじめ各国の再処理工場では、火災、爆発、臨界事故などがたびたび起こっています。
六ケ所再処理工場では、これまでも配管から硝酸溶液が漏れる事故や、溶接不良による水漏れなどを起こしています。本格運転によってプルトニウムなどを含む溶液が漏れない保証はありません。クリプトンなどの放射性廃棄物を海や大気に垂れ流しにするため、環境汚染を広い地域にもたらすことも問題です。
こうした危険性の高い施設を規制すべき安全行政は、極めてお粗末な体制でしかありません。原子力の規制と推進の分離という国際安全基準に反して、原子力を規制する安全・保安院が原子力を推進する経済産業省のもとにおかれているからです。これでは再処理施設への安全規制は期待できません。
青森県が開いた意見聴取の会では「不安は解消されたとはいえない」との意見が相次ぎました。県民意識調査でも、原子力施設の安全対策に満足しているのは一割に満たないなど、住民の不安がひろがっています。
プルトニウムを大量に生産しても、実際に使用する見通しはありません。政府が当初予定していた高速増殖炉の開発は頓挫しました。既設原発でプルトニウムを燃やすプルサーマル計画も、玄海、伊方などの原発で実施しようとしていますが、住民の強い反対を招いています。プルトニウムは容易に核兵器に転用できる物質であり、余分にもてば、核不拡散の見地から国際的な批判を受けることになります。
核燃料サイクルの施設は、旧動燃の高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム火災事故(一九九五年)、東海再処理工場の火災爆発事故(九七年)、JCO核燃料加工工場の臨界事故(九九年)など、重大な事故を相次いでおこしてきました。
国民負担が19兆円も
コスト面から見ても、核燃料サイクルにかかる費用負担は、使用済み燃料を再処理せずにそのまま処分する場合より高くつくことが、原子力委員会の試算で明らかになっています。六ケ所再処理工場にかかる国民負担だけでも、十九兆円にのぼると見込まれています。
重大事故の危険性を高め、余分なプルトニウムと膨大な経済的負担をうみだすだけの核燃料サイクル政策は、根本から見直し、自然エネルギーの本格的な開発など、安全なエネルギー政策を確立すべきです。