2006年3月29日(水)「しんぶん赤旗」

主張

PSE法

中古品適用除外へ前進はかれ


 中古の電子楽器や電気製品が、四月一日から陳列することも販売することもできないという事態は、何とか回避することができました。

 経済産業省が、製造から五年以上たつ中古品は「PSE」マークをつけなければ販売できないと決めたことに国民から批判が高まった結果です。

 経済産業省は、リサイクル業者などの検査体制が整うまでは、中古品の取引を容認するとしています。しかし、中古品への適用は変えていない以上、リサイクル業者などの不安が取り除かれたわけではありません。不安解消には中古品の適用除外にすすむことが不可欠です。

経産省がもたらした混乱

 電気用品の安全性の検査を国の責任でおこなうのではなく、民間の製造業者や輸入業者任せにする電気用品安全法は、もともと大企業に都合のよい、規制緩和のための法律です。経済産業省は、法律を決めるときには中古の楽器や電気製品は同法の対象になるとは明記していなかったのに、期限が間近になって突然、中古品も対象だと言い出しました。

 リサイクル業者の大半は中小零細の業者です。突然「PSE」マークをつけなければ売れないといわれてもその準備も体制もありません。それこそ多くの業者の存続にもかかわると、反対の声が広がりました。

 消費者のなかには生活に困り、新品の製品は高くて買えないという人もいます。中古の電気製品などが売り買いできなくなれば、生活に与える影響も無視できません。楽器や音響機器など「ビンテージ」と呼ばれる貴重な中古品が市場から姿を消せば、文化的な意味でもその損失は計り知れません。

 反対の世論に押され、経済産業省も、希少価値の高い中古楽器や音響製品は除外することや、リサイクル業者も簡略な手続きで「PSE」マークをつけられるようにし検査機器を無料で貸し出すなどの対策を打ち出しました。ところが深刻なのは、その対策をめぐってさらに混乱が加速したことです。

 「ビンテージ」といってもどこで線引きするのか。検査機器を貸し出すといっても、検査機器そのものが圧倒的に不足していました。これでは業者の自主検査で「PSE」マークをつければよいといっても、まったく絵に描いたもちです。

 経済産業省が先週末になって、リサイクル業者などの検査体制が整うまではとしながらも、実際には期限を切らず、中古品を取引してもよいとしたのは一歩前進です。しかしなぜあくまで中古品を電気用品安全法の対象とすることにこだわるのか。もともと法律ができたときには中古品は対象ではありませんでした。

 五年以上前に作られたといっても、当時は国の安全規格で作られています。欠陥があれば製造業者の責任です。新たに、「PSE」マークをつけなくても、販売の際通常の注意を払えば、安全確保は十分可能だというリサイクル業者などの主張には根拠があります。

民間任せを見直せ

 根本的には電気用品の安全性の検査を民間任せにした矛盾があります。民間任せの検査で、零細なリサイクル業者がどこまで責任を負えるでしょうか。

 国民が広く使う電気用品の安全性は国が責任を負うべきです。中古品はもちろん電気用品全体について、安全性を民間任せにしている現在の検査体制に踏み込んだ検討がいよいよ避けて通れなくなっています。


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