2006年3月28日(火)「しんぶん赤旗」
主張
首相会見
格差拡大予算に自覚がない
二〇〇六年度予算が自民、公明の与党の賛成で成立したのをうけ、小泉首相が記者会見しました。
予算は、格差と貧困の拡大が大問題になっているのに、所得税・住民税の定率減税全廃や医療改悪など、二兆七千億円もの新たな負担を国民に押し付け、さらに格差を拡大する中身です。
驚いたのは首相の態度です。予算の「年度内成立」や「四月からの円滑な執行」をいうだけで、国民に負担を求めることへの一片の説明もありません。格差拡大予算への自覚がありません。
暮らしの実態知らない
小泉首相は、「ようやく景気拡大の足取りがしっかりしてきた」「小泉内閣が進めてきた改革の芽がようやく出てきた」と自画自賛の言葉をつらねます。今度の国会の施政方針演説以来、繰り返してきた言葉そのままです。
「景気回復」といっても、国民の多くは不安定化する雇用、目減りする所得に苦しみ、生活の不安を募らせています。小泉首相は国民の暮らしの実態が本当にわかっていないと改めて痛感せざるを得ません。
小泉「改革」がすすむ中で、いま大問題になっているのは格差と貧困の拡大です。三月半ばの日本世論調査会(共同系列)の調査でも、所得の格差が「広がっている」「どちらかといえば広がっている」と感じる人が合計で87%を占めています(「東京」十九日付など)。格差の拡大は、文字通り国民の実感です。
国会の予算審議でも、集中的に議論された問題のひとつがこの格差問題です。日本共産党は、格差拡大の実態を指摘するとともに、その背景に小泉「改革」路線があることを明らかにしました。規制緩和万能路線が不安定雇用を拡大し、「官から民へ」「小さな政府」が国民の“頼みの綱”の年金や公的医療をやせ細らせていると批判しました。
自らの「改革」を自慢するだけの小泉首相にはこうした国民の苦しみはまったく見えていません。国会答弁では「格差はいわれるほど大きくない」と繰り返した上、最後には「格差があるのは悪くない」とまで発言しました。予算成立後の記者会見でも、後任の首相候補に何を望むかと聞かれて、「改革路線をしっかり進めてほしい」と答えるありさまです。格差拡大への反省はありません。
国民にとって、小泉「改革」の害悪は、例えばこの四月から予定されている数々の負担増を見ても明らかです。国民年金保険料の引き上げ、障害者「自立」支援法の施行による「応益負担」の押し付け、介護保険料の引き上げ、診療報酬の改定など、文字通り国民負担増のオンパレードです。こんな国民に冷たい政治は、もう国民の側から幕を引かなければなりません。
動き出す消費税増税
見過ごせないのは、予算の成立を待ちかねたように、国民に新たな負担を押し付ける策動が早くも動き出したことです。予算成立の当日、政府の財政制度等審議会は、歳出削減だけでは財政の回復はできず消費税の大幅増税は避けられないという報告をまとめました。谷垣財務相は予算成立後の記者会見で、消費税引き上げ法案を来年の国会に提出する意欲を示しました。
国民の暮らしの実態に目を向けようともせず、国民に痛みを押し付けるばかりの小泉「改革」路線をこれ以上続けさせるわけにはいきません。国民のたたかいを広げることがますます重要になっています。