2006年3月25日(土)「しんぶん赤旗」

主張

空の安全

信頼の基盤壊した規制緩和


 大量交通機関、とりわけ航空機の安全確保は、国民の生命に直結する重大問題です。日本航空では深刻なトラブルが相次ぎ、格安運賃で売る新規参入航空会社スカイマークエアラインズ(SKY)の安全軽視も表面化しました。機体の重大な不備を修理せず、きわめて危険な状態で、長期間運航していました。「空の安全」が厳しく問われる事態です。

九〇年代後半から

 日航、SKYいずれの問題も、政府が九〇年代後半から本格化させた航空の規制緩和と、それを背景にした航空会社の利益至上主義経営が根本原因です。

 「国際競争力をつける」という名目ではじまった航空の規制緩和は、航空会社の新規参入や運賃設定を原則自由化するとともに、整備、検査などの安全規制の撤廃・緩和を次々すすめました。

 とくに問題なのは、「自社運航」という航空法の基本原則をとりはらったことです。航空会社が、自社の航空機と乗務員、整備体制で運航を維持できるというこの原則は、企業の責任を明確にし、整備能力の維持・発展を支える生命線でした。

 ところが、運輸省(現国交省)の強い後押しを受けて新規参入し、規制緩和の「申し子」とも呼ばれたSKYは、機材はリース、整備は他社まかせ、社員の多くは契約という会社でした。こんな業態の会社が解禁されたことで、航空各社のコスト削減競争に拍車がかかりました。

 整備の海外委託・外注化、整備部門の別会社化がすすみ、パイロットへの長時間乗務押し付け、客室乗務員の子会社化・派遣置き換えなど、利益第一の経営が横行したのです。

 SKYの問題の飛行機は、ブルネイ航空からリースした中古機でした。納入前に台湾の整備会社が整備し、そのさいの作業ミスで機体にへこみができ、修理が遅れることで亀裂まで入っていました。海外での整備には、信頼性への懸念が強く出されています。自社では安全を確認できない無責任な会社が、重大事故につながりかねない危険な飛行機を運航させていました。

 SKYでは安全運航の要である整備士の退職も相次ぎ、到着から次の出発までに航空機の飛行間整備をする確認整備士を配置できなくなるなど要員不足が著しくなっています。リストラのなかで退職が相次いだもので、利益優先が安全を支える体制を掘り崩しています。

 規制緩和推進論者は「事故を起こせば競争に負けるのだから安全を低下させる経営者はいない」といって、国の安全規制は必要ないと主張しています。しかし、激しい競争のなかで、安全が後回しにされているというのが現実です。規制緩和後の九八年には全日空が、日航も九九年、〇五年の二度にわたって、運輸省・国交省の事業改善命令を受けました。問題はSKYだけではありません。業界全体の安全を支える総合的な力が弱くなっています。

競争万能のゆがみ

 国交省の岩崎貞二航空局長は昨年一月の講演で「めちゃくちゃな競争で、皆ひ弱になっている。(新規参入会社は)中古機を飛ばして、あまり整備をしないようで、たびたび欠航している」と発言し、国会でも取り上げられました。国交省は、規制緩和がつくりだした業界の深刻な実態を、百も承知のはずです。

 高い公共性と安全性が求められる航空産業に、競争万能の規制緩和はなじみません。国の安全規制を抜本的に強化し、積み重なったゆがみをただす対策が求められています。


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