2006年3月23日(木)「しんぶん赤旗」

番組に抗議は“この人たち”

NHK裁判 政治家名を指さし

制作局長“自民は甘くなかった”

永田氏証言


 「無念です」。二十二日、東京高裁でNHK裁判の証言に立った永田浩三チーフプロデューサーは時折、言葉をつまらせながら語りました。焦点は、昨年十二月、長井暁チーフプロデューサーが証言したように、NHKは政治家向けに番組の説明マニュアルを作成していたのかどうかです。この日の永田証言で、番組改変への自民党幹部の関与を示す新事実も浮かび上がりました。


 「(マニュアルの原案を書いたのは)私です」

 永田氏は原告・バウネット側の尋問にそう答えました。

 永田氏は、放送前の一月二十六日ごろ、伊東律子番組制作局長が、「(番組について抗議を)言ってきているのは、この人たちよ」と、自民党議員らでつくる「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の本にある中川昭一衆院議員の名前を指さしたことを証言し、中川議員の番組改変への関与を示唆しました。放送直前、加害兵士、慰安婦の証言を削ろうと言いだしたのは伊東氏でした。

 永田氏は放送当日、伊東氏が吉岡民夫教養番組部長に「自民党は甘くなかったわよ」と語っていたことにもふれました。

 永田氏は最後まで番組編集責任者として制作にかかわってきました。NHKはこれまで、番組改変は自主的に判断した結果であり政治圧力はなかった、としていますが、永田氏の証言は、それをひっくり返すものとして注目されます。

 番組の核心をなす慰安婦の証言まで最終的に削除されたことについて、永田氏は「人間としてやっていいことと、悪いことがある。弱い立場に立つ仕事を棄損する判断だった」と語りました。

 裁判の原告・バウネットジャパンは、控訴審終了後に「報告集会」を開き、ジャーナリストの原寿雄氏が講演しました。


 NHK裁判 NHKのETV2001「戦争をどう裁くか(2)戦時性暴力」(二〇〇一年一月放送)をめぐって、番組を改ざんしたとして市民団体のバウネットジャパンがNHKなどを訴えました。番組は、戦時中の慰安婦問題を裁いた二〇〇〇年の女性国際戦犯法廷(バウネット主催)を取り上げたものです。慰安婦への日本政府・軍の責任、昭和天皇の戦争責任についてふれた部分はすべてカットされました。


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