2006年3月23日(木)「しんぶん赤旗」
社会変革に前進するベネズエラ
チャベス政権のもとで自主的、民主的な国づくりをすすめるベネズエラに対しブッシュ米政権が対決・干渉姿勢を強めています。ベネズエラは中南米の地域統合を推進し、米政策にたいする各国の連帯と団結を呼びかけています。
ブッシュ政権は、二〇〇六年のQDR(四年ごとの国防計画見直し)で、ベネズエラが「大衆迎合的で権威主義的政治運動を復活」させていると非難。ライス米国務長官は最近の下院外交委員会で、「(ベネズエラに対抗する)ある種の統一戦線をつくるために他国と話し合っている」と発言しました。
ベネズエラ国内では、昨年十二月の国会選挙で、百六十七議席すべてをチャベス大統領支持の議員が占めました。与党第一党の第五共和国運動(MVR)は単独で百十八議席を獲得。ベネズエラ共産党も七議席を獲得し、四十三年ぶりに国会に議席を得ました。
政府が今年一月に発表した年次報告によると、同国の貧困層は〇三年の55%から昨年には37%にまで減りました。義務教育を受ける生徒の数は、一九九九年以来、初等教育で13%、中等教育で55%増えています。
ベネズエラは昨年十二月、南部共同市場(メルコスル)に正式加盟しました。チャベス大統領は「メルコスルを貧困のない地域にしよう」と呼びかけました。米国が押し付けた新自由主義から脱却する方向でボリビアやアルゼンチン、ブラジルとの経済協力の強化をすすめています。(島田峰隆・党国際局員)
米紙論評 「チャベスたたきの失敗」
“米国は孤立”
米紙ロサンゼルス・タイムズ三月九日付は、「ウゴ(チャベス・ベネズエラ大統領)たたきの失敗」と題する論評を掲載しました。
同記事は冒頭で、米国がベネズエラのチャベス政権を孤立させる長期的政策を続け、各国に同調を求めているが、「西半球におけるベネズエラの影響力は大きくなり続けており、一方で米国はこの半世紀のいずれの時期よりも深い孤立に陥っている」と指摘しています。
その理由として同紙は、「第一にベネズエラは民主主義国だということだ」と強調しました。「ベネズエラの選挙には透明性があり、米州機構(OAS)、カーター・センター(米国の非営利組織)、欧州連合(EU)の監視団から合格と認められてきた。少なくとも西半球の他の地域と比べ言論、報道、集会、結社の自由は広く行き渡っている」と指摘しました。
また、「ラテンアメリカの視点からすれば、ベネズエラ国民は、米国から干渉を受けることなしに、自分たちの大統領―たとえその人が時に米国大統領を侮辱するとしても―を選出する権利を持っていなければならない」と述べました。
記事は、原油価格の高騰を背景に、ベネズエラが各国に石油の低価格供給や融資などの援助を行っているなかで、米国が押し付けた新自由主義に対する「チャベス大統領の反発」は、長期の経済破たんに苦しむラテンアメリカで「共感を持たれている」と指摘しました。
同記事はさらに、「ベネズエラ政府は石油による富を貧困層に分配する公約を守ってきた。今ではベネズエラの大部分の人々が、無料の保健医療と補助金の伴った食料援助を利用できるようになっている。教育のための政府支出は顕著に増えた」と指摘。また、「米国ではコネティカット州が、貧しい人々に暖房用灯油を割引して供給するシトゥゴ石油会社(ベネズエラ国営石油公社<PDVSA>の子会社)の計画に参加する八番目の州となった」ことをあげ、「ベネズエラは西半球における心情と理性の競争で明確な勝利を収めつつある」と述べています。
ベネズエラのチャベス大統領は一月二十七日、カラカスで開かれた第六回世界社会フォーラムで演説し、米国の帝国主義政策とたたかう世界の運動の団結と自主性の尊重を訴えました。該当部分の要旨は次の通りです。
自主性尊重し団結を
チャベス大統領演説 (要旨)
世界を変えることは確かに可能だ。全世界で巨大な反帝国際戦線をつくる作業を再開する根拠が、日に日に強くなっている。すべての大義を結びつけ、押し付けでなく、多様性と運動の自主性を尊重しながら団結することが必要だ。
たたかいは前進してきた。カナダのケベックでの首脳会議(二〇〇一年四月の第三回米州首脳会議)で、政府として米州自由貿易地域構想(FTAA)に反対していたのはベネズエラだけであった。だが昨年アルゼンチンのマルデルプラタでの第四回米州首脳会議では、七時間議論したのに、米国はFTAAを実現できなかった。
それはすさまじいたたかいだった。議論では、私たち五人の大統領が連携した。アルゼンチンのキルチネル、ブラジルのルラ、ウルグアイのバスケス、パラグアイのドゥアルテ、そして私だ。メルコスル(南部共同市場)諸国にベネズエラを加えたものだ。われわれは連携し、FTAA論議を再開する義務を文書の中に押し付けるという(米国の)野心を拒否した。
FTAAは米国の帝国主義的、植民地主義的な提案だ。私たちはその代わり統合へ向けた確固とした歩みを踏み出している。ラテンアメリカとカリブ海諸国の統合の新しい段階へと前進している。米州ボリバル代替構想(ALBA)は、キューバとベネズエラの間で現実のものになっている。
時間を浪費している時ではない。地球上の生命を救い出すことが問題になっているのである。歴史の進む方向を変えなければならない。この点から、私たちは二十一世紀の新しい歩みとして再び社会主義の旗を掲げてきた。新しい、新鮮な社会主義だ。
ラテンアメリカでは、マリアテギ(ペルーの社会主義者、一八九四―一九三〇年)が語っていたように、社会主義は、先住民擁護主義の要素を強く持たなければならない。モデルの模倣であってはならない。モデルや教科書を模倣したことが、二十世紀の社会主義の試みの大きな誤りの一つだった。各民族の自主性、多様性、もともと持っている力に依拠して建設しなければならない。