2006年3月22日(水)「しんぶん赤旗」
自公民など国会議員秘書
兼職295件
不動産業 年収2600万円
地方議員 報酬495万円
国会議員秘書のかたわら年収“二千万円を超すサイドビジネス”や、地方議員や労組の専従―。税金で給料をもらっている国会議員の公設秘書の、どちらが本業かわからない兼職の実態が、本紙の調べでわかりました。
税金二重取りの金庫番も
本紙が調べたのは、衆参両院議長あてに提出されている「議員秘書の兼職届」。このなかには、二千万円を超す収入を報告している秘書も。
たとえば、自民党・三ツ林隆志衆院議員(埼玉14区)の第一秘書、民主党・田名部匡省元農水相(参院青森)の政策秘書は、それぞれ不動産賃貸業で年収二千六百万円、二千五百四十万円です。自民党・清水清一朗衆院議員(比例東京)の第一秘書は、生命保険代理店で年収千八十五万円。同・馬渡龍治衆院議員(比例東海)の政策秘書は三社の兼職で計七百八十八万円の年収を報告しています。
支障ないか
地方議員の兼職を届け出ていた秘書も二人いました。
自民党・山本幸三衆院議員(比例九州)の第二秘書は、福岡県豊前市の市議。四百九十五万円の年収を報告しています。同・藤井勇治衆院議員(比例近畿)の弟でもある第一秘書は、滋賀県虎姫町議で、二百六十万円と報告。国会議員の活動を支えるという「職務の遂行に支障」はないのか―。
秘書といえば、「金庫番」が想起されますが、こんな例も。
「自民党島根県第二選挙区支部」と明記、二百十二万円の年収を報告しているのは、自民党の竹下亘衆院議員(島根2区)の第二秘書。同支部は、竹下氏が支部長で、第二秘書が会計責任者兼事務担当者。同支部の政党助成金等報告書(〇四年分)によると、自民党本部から政党助成金千五百万円を受け取り、人件費に九百七十八万円を支出しています。この第二秘書は、秘書給与のほか、政党助成金からも人件費を受け取っていたことになり、税金の二重取りです。
兼職にかかわる企業・団体の名称を報告することになっているのに、自民、公明、民主、社民各党とも「政治団体等」という届け出も目立ちます。自民党の大島理森元農水相(衆院青森3区)のように政策秘書が「政治団体A」、第一秘書が「政治団体B」という報告もありました。
労組からも
民主党や社民党の議員秘書には、労働組合を届け出ている例も。
議員の出身母体である全トヨタ労連、トヨタ自動車労組から約四百万―五百万円の収入を得ていたのは民主党・直嶋正行政調会長代理(参院比例)の第一秘書、第二秘書と、古本伸一郎衆院議員(愛知11区)の第二秘書です。いずれも全トヨタ労連の「専門委員」です。社民党の菅野哲雄衆院議員(比例東北)の第一秘書は自治労宮城県本部から七百四十四万円。
自・民とも130件
兼職届を提出していたのは、衆参153人の国会議員の公設秘書196人で、あわせて295件。内訳は、自民党=78人の議員の94人の秘書が計131件▽民主党=58人の議員の76人の秘書が計132件▽公明党=6人の議員の秘書10人が計11件▽社民党=5人の議員の秘書8人が計9件―など。
伊藤元長官秘書2人が未届け
伊藤公介元国土庁長官(自民党)の公設秘書2人は兼職届を提出していないことが、耐震強度偽装問題にからんで発覚しました。この会社は、「ヒューザー」が開発したマンションの点検業務などを受注したビル管理会社「フューチャービジネスネットワーク」(東京・銀座)。元長官の三男が経営する会社で、公設第一秘書の二男が取締役、政策秘書が監査役でした。元長官側は「届け出が遅れた」などと弁明していましたが、届け出をしないまま、2人とも1月25日に同社の役員を辞任しました。
公設秘書の兼職禁止 国会議員秘書給与法は、公設秘書給与の詐取事件が相次いだため、二〇〇四年に改正され、公設秘書が他の職務に従事することや事業を営むことを禁止しました。国会議員が「職務の遂行に支障がない」と判断した場合は兼職が可能ですが、企業・団体の名称、報酬の有無・報酬額を衆参議長に提出することになっています。