2006年3月22日(水)「しんぶん赤旗」
「自立支援」と福祉工場
月給12万円 利用料1万円に不安
障害者と健常者がいっしょに働く福祉工場「熊本コロニー印刷」で働きだして十年になる君塚洋平さん(34)=仮名=は、市内で一人暮らし。月給は手取り十二万円ほど。難聴の障害がありますが、障害基礎年金は受給できる資格がなく、工場で働く給料が収入のすべてです。
1日1回の食事
「給料が安いから転職もちょっと考えたことがあるけど、障害者の就労条件は、どこも厳しいから…」と君塚さん。節約のために一日一食しか食事をとりません。それも一日五百円程度という質素なもの。新たに利用料負担が一万円も押しつけられたら…と不安がよぎります。
「『自立支援』法は、現実を見ていない机上で作られた法律といわざるをえない」と指摘するのは、熊本コロニー印刷労働組合の山田猛委員長です。山田さんは脳性マヒの障害がありますが、日常生活でも、パソコンに文字やレイアウトを入力するオペレーターの仕事でも介助サービスは必要ありません。
「工場は、労働者が日々切磋琢磨(せっさたくま)しあいながら、仕事をする職場です。『自立支援』法は、この職場を施設に戻せと迫るものです。まったく実態にあっていない」と声を震わせます。
実態に合わせて
利用料負担に反対する声は、労働問題としても取り上げられています。熊本コロニー印刷の運動とあわせて、日本共産党の熊本県委員会、市議団も福祉工場への「自立支援」法の適用凍結を求めて国、自治体に働きかけています。熊本県労連も運動に加わりました。
熊本コロニー印刷労組の楳本光男書記長は、こう強調します。「利用料負担は、職場に健常者と障害者との分断さえ持ちこみかねません。仮に実施されても、利用料は事業所が負担すべきですが、そのことは工場経営そのものの負担増になります。このままでは工場自体の運営にも支障が生まれることは目に見えています」
党も各地で対話
日本共産党は「自立支援」法の実施を前に重い利用料負担に対し、負担上限額の見直しや減免策の充実を求めた「緊急要求」を発表し、各地で対話を広げています。「自立支援」法実施による問題について上京し、政府交渉を進めてきた日本共産党の益田牧子熊本市議は、いいます。
「『自立支援法』の四月実施で、障害者の就労や生活に大きな影響が出ます。党の政策をもとに、実態に見合った施策をするよう運動を大きく広げていきたい」