2006年3月21日(火)「しんぶん赤旗」

主張

高金利引き下げ

社会の「落とし穴」ふさごう


 自殺や自己破産者の増加など深刻な社会問題の背景になっている消費者金融(サラ金・クレジットなど)の規制を求める論議がひろがっています。最高裁は消費者の保護を重視する判断を相次いで下し、金融庁もこれを受けて、六月までに結論を得たいとしています。

 消費者金融の高すぎる金利の被害を根絶するために、暴利を規制する制度を早急に実現する必要があります。

グレーゾーン金利

 貸金業者の暴利を規制する法律は二段構えになっています。利息制限法は年15―20%を上限金利と定めていますが、罰則はありません。刑事罰がある出資法の上限金利は年29・2%です。この間の金利は「グレーゾーン(灰色)」と呼ばれます。貸金業規制法は、利用者が自分の意思で払うなどの条件で、“灰色”金利を有効としています。消費者金融はほぼ上限いっぱいで貸し付けており、グレーゾーンが高利を押し付ける仕掛けになっています。

 消費者金融業界の統計からは「一人あたりの借入額百四十五万円、借入先三・三社」という平均的利用者像が浮かびます。約三割の金利では、年間五十万円近い利息を払うことになります。高利に返済が追いつかず、借金が膨れ、複数の消費者金融を利用して返済困難に陥るというのが常態化しています。「破産予備軍」といわれる多重債務者も二百万人にのぼります。

 普通預金の金利がほとんど0%という異常な超低金利のなか、消費者金融はわずか1―2%の金利で大銀行から調達した金を25―29・2%の高金利で貸し付けます。まさに暴利としかいいようがありません。銀行や保険会社がもつ国民の貯蓄が、消費者金融会社にまわり、結局、国民に貧困と格差を広げています。

 銀行は、直接にも、消費者金融に手を出しはじめています。三井住友銀行―プロミス、三菱東京UFJ銀行―アコムと、大銀行が次々、大手サラ金を傘下におさめています。銀行系クレジット会社も高利の個人向けカードローンを拡大しています。グレーゾーンの異常な高金利で不当な高収益をあげる消費者金融を、グループ内に組み込んでいます。巨額の公的資金を受けた銀行の特別な社会的責任からも許されません。

 消費者金融の被害者、救済に取り組む団体、消費者団体は、少なくともグレーゾーンを無くすこと、さらに上限金利を適正な水準に引き下げることで、被害を根絶すべきだと強く要求しています。日本共産党の大門実紀史参院議員の質問(十五日)に、小泉純一郎首相は「高金利をむさぼっている業者に被害を受けないような対策を講じなければならない」と答えました。政府は、異常な高金利の被害を断つ、実効ある上限金利規制にふみだすべきです。

暴利を絶て

 消費者金融業界は、異常な高収益を支える高金利の「既得権益」を守ろうと激しく抵抗しています。出資法上限金利の引き上げ、グレーゾーン金利の適用条件緩和、はては「金利規制を廃止し、市場メカニズムに委ねるべきだ」と、その主張には際限がありません。

 業界をあげて自民党への献金攻勢をかけ、政界への働きかけも強めています。こんなことで政策が曲げられるなら、国民は救われません。

 高金利被害は、国民のだれもがいつ落ち込んでも不思議でない、日本社会に開いた「落とし穴」です。それをふさぐ改革は待ったなしです。


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