2006年3月19日(日)「しんぶん赤旗」

主張

イラク戦争の3年

平和と生活破壊の根源を除け


 米英軍がイラク攻撃を開始してから二十日で三年になります。国連安保理決議なしに始めたイラク先制攻撃戦争が、国連憲章にもとづく世界の平和秩序を真っ向から破壊する無法な侵略戦争であることは、ますます明白です。

 イラク国民の多数が自分たちの安全のために求めている米軍撤退をすみやかに実現し、情勢悪化の根源を取り除くべきです。

 日本政府は、道理のないアメリカの戦争を支持し、憲法をふみにじってイラクに派兵してきた自衛隊を、ただちに撤退させるべきです。

大義なき侵略の結果

 戦争の口実は、ことごとく崩壊しています。イラクに大量破壊兵器がある、イラクの旧フセイン政権が国際テロ組織アルカイダとつながっている、というブッシュ米政権の口実は、米政府自身の査察・調査報告によって否定されました。

 大義なき戦争がイラクにもたらしたのは、国民の生命を奪い、国土を破壊した傷あとです。「パンドラの箱をあけた」と駐イラク米大使も認めるほど国内の対立を深め、「内戦の危機」さえ招いた根本原因も、米軍の戦争と占領支配にあります。

 イラクでは昨年末、新しい憲法をもとに総選挙がおこなわれました。しかし米軍は、イラク国民議会がようやく初会合を開いた十六日、開戦以来最大規模の攻撃ヘリや軍用車両を投入した掃討作戦を開始するありさまです。イラクの戦争状態が続いています。

 イラク国民の死者は、数万人にも十万人にもなるとみられています。バグダッドの遺体安置所に運びこまれるイラク人の死者は、千人をこえる月もあります。その何倍にもなる負傷者や不当に投獄・虐待された人々と家族・親族の苦しみははかりしれません。犠牲者は増え続け、苦しみを広げています。

 米軍の蛮行が引き起こしたのは、イラク国民の憤激と抵抗です。最近のゾグビー・インターナショナル社調査によれば、外国「テロ」勢力がいなくても抵抗が続く、と三分の二以上のイラク駐留米兵がみています。

 ブッシュ政権は、“独裁者フセインを取り除けばイラクは民主化され、安定する”という戦争の口実も宣伝しましたが、イラク国民の安全と生活状態はいっこうに改善していません。

 電力の安定供給はよくて20%台、首都と中部では一ケタ台。安定的な飲料水の供給も50%、60%台。十五歳から二十四歳の完全失業率は10%から20%台(二〇〇四年の国連開発計画報告)―生活条件も治安状況も、多くのところで悪化しています。

 戦争をすれば分裂したイラクになると多くの人びとが懸念したとおり、イラクで内戦状態がつくられていることは、重大です。不当な戦争がイラクの分裂、対立、宗派間抗争を深めているのです。

世界の変化と米世論

 この三年、国際社会では米国のイラク戦争に反対し、国連を中心にした話し合いで紛争の平和解決を求めるかつてない世論と運動が広がりました。

 米国内でも、イラク戦争は誤りだった、戦争ではイラクの情勢を解決できない、という世論が広がってきました。

 日本でも世界でも、こうした平和への流れをもっと大きくすることが求められています。それは、イラクの平和な未来にとっても、不可欠です。


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