2006年3月18日(土)「しんぶん赤旗」
「医療の崩壊」を警告
政策転換要求 日本医学会がシンポ
「市場原理」にゆだねた弱者切り捨ての米国医療の悲劇を日本で再現していいのか――日本医学会総会(会頭・杉岡洋一九州大前総長)の公開シンポジウム「どうする日本の医療」が十六日、東京都内で開かれました。
アメリカ在住の医師で、『市場原理が医療を亡ぼす』の著者、李啓充氏が、「市場原理と医療―米国の失敗を後追いする医療改革」と題して基調講演。日本が「改革」のモデルとするアメリカで、公的医療保険にも民間保険にも入れない無保険者が四千五百六十万人にのぼり、医療費を払えないことによる破産が、個人破産原因の第二位になっていることを生々しく報告しました。また、民間保険会社など「医療におけるビジネスチャンスの創出をねらう勢力が、混合診療解禁などの『規制改革』を主張している」とのべました。
パネルディスカッションでは、『健康格差社会』の著者・近藤克則日本福祉大教授が、公的医療費を抑制した結果、入院待機者や患者の待ち時間の増加、医師の海外流出などが相次ぎ、医療を荒廃させたイギリスの経験を紹介。日本の医療費は国際的にみて低く、患者や現場にしわ寄せされており、政府の政策は「やせている人が、ダイエットするようなものだ」と批判しました。
同じくパネリストの本田宏・埼玉県済生会栗橋病院副院長は、日本の医師数は現在二十六万人で、OECD(経済協力開発機構)基準をあてはめると十二万人も少ないことを指摘。青森県十和田市で産婦人科医がいなくなるなど「日本の医療の崩壊は始まっている」とのべ、政府の医療費抑制策の転換を求めました。