2006年3月16日(木)「しんぶん赤旗」
チリ 60歳以上医療費無料
新政権、公立病院対象に
新自由主義のゆがみ是正
【メキシコ市=松島良尚】チリのバリア保健相は十四日、同日から六十歳以上の国民の公立病院での医療費を無料にすると発表しました。対象となるのは国家健康基金(FONASA)加入者。この十一日に同国初の女性大統領に就任したバチェレ大統領が翌々日の記者会見で、「四十八時間以内に実施する」と明言していました。
これまでは六十五歳以上が医療費免除の対象でした。チリの人口は約千六百万人ですが、今回の措置で新たに十三万人が医療費無料の恩恵を受けることになるといいます。給与所得のない貧困層は以前から無料でした。
今回の措置はバチェレ氏の公約の一つです。政令によって実現可能でした。大統領は十三日の記者会見で、「われわれの目標は、経済成長の恩恵がすべての国民に確実に届くようにすることだ」と述べました。
この記者会見で同大統領は、最低年金額の引き上げや、無収入の高齢者への年金給付、保育所の増設などの具体化にとりかかったことも明らかにしました。
バチェレ氏はまた、すべて二人区の下院選挙制度を改革するため、内相に各党の意見をとりまとめるよう指示しました。有権者の意思を十分反映しない現行制度の改革は、チリ共産党はじめ広範な民主勢力が求めています。
チリでは、南米の中でもいち早く新自由主義政策が導入されました。一九七三年のクーデターで発足したピノチェト軍事政権直後から大規模な民営化が実施され、緊縮政策による福祉切り捨てや補助金撤廃、規制緩和などが進められました。
民政移管後の政権も基本的にはその路線を踏襲しています。その結果、急速な経済成長の一方で、半数近い国民が平均所得の半分にも満たない状況が生まれています。
バチェレ大統領は、新自由主義を直接批判する姿勢はこれまでのところ示していませんが、社会問題の解決を優先するとし、四年の任期中に「全国を網羅する社会保障ネットワークを築く」と公約しています。