2006年3月16日(木)「しんぶん赤旗」
16カ国で鳥インフルエンザ
欧州 必死の防戦
【パリ=浅田信幸】欧州では二月から、飛来した渡り鳥が原因とみられる高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスへの感染例が伝えられるようになりました。
獣疫専門家は昨年七月、渡り鳥による鳥インフルエンザウイルスの拡散に警告を発していましたが、それが不幸にも的中しました。
昨年十月にも、欧州連合(EU)に隣接するルーマニア、トルコなどで感染例が確認されました。これはシベリア方面からの渡り鳥がもたらしたものだといわれます。英国では、輸入した南米のオウムからウイルスが検出されています。
このときEUは、販売目的の野鳥の輸入を全面的に禁止。感染例が出た国からの生きた家禽(かきん)やペットの鳥の輸入も中止し、騒ぎはいったん下火になりました。
2月初め拡大
ところが今年に入り、二月初めのイタリアとギリシャを皮切りに感染例は欧州で一気に拡大しました。EUでは、この二国に続きオーストリア、ドイツ、フランス、スロベニア、ハンガリー、スロバキア、ポーランドの九カ国で、また隣接諸国でもトルコ、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニアで、相次いで渡り鳥のH5N1型ウイルスへの感染例が確認されています。
EUではイタリアとギリシャでの感染が確認されると同時に、昨年末から検討していた感染の流行を予防する措置を始動させました。
最大の狙いは、「人と家禽への感染を阻止する」ことです。フランスの保健研究所が一月初めに明らかにしたところでは、H5N1型ウイルスの流行を許した場合、人口の15%(九百万人)から35%(二千百万人)に感染する恐れがあり、仮に25%(千五百万人)に感染したと仮定すると十二万人近い死亡者が出るかもしれないと予想しています。
予防の措置は
具体的な予防措置は、▽感染例があった場所を中心に半径三キロ以内を「保護地区」に指定し、家禽類の屋内への収容と移動の禁止▽半径十キロ以内を「監視地区」とし、生きた家禽類の販売禁止、消毒の徹底▽家禽に感染例が出た場合、同じ飼育場のすべての家禽と卵の処分―などです。
もう一つの措置はワクチン投与ですが、これはEU内で合意に至っていません。二回投与する必要があるため費用がかさむ問題もありますが、ワクチンの効果で発病しない場合でも感染そのものは防げず、したがってワクチンを投与されていない家禽類とは常に隔離させておく必要があります。このためこれまでにワクチン投与の実施を決定し、EUが許可したのはフランスとデンマークの二国にとどまっています。
EUでは鳥インフルエンザに感染した渡り鳥が確認されていない国でも、多くのところで野鳥との接触を回避するために家禽を屋内飼育に切り替えています。
フランスでは二月末、全土の家禽を屋内に収容する措置をとった八日後に、屋内飼育されていた七面鳥がH5N1に集団感染し、一万一千羽が直ちに処分されました。病気になった鳥の糞(ふん)とともにウイルスが運び込まれた可能性もあるといわれます。
その後、ドイツやオーストリアその他で野生の猫やテンなどほ乳類への感染も確認されていますが、家禽類の集団感染はいまのところフランスの例だけにとどまっています。