2006年3月16日(木)「しんぶん赤旗」
中国全人代終わる
国民生活重視の経済成長へ
汚職腐敗克服は緊急課題
今年の中国第十期全国人民代表大会(全人代)は十四日、温家宝首相の二時間を超える記者会見で十日間の日程を終えました。
今回採択された第十一次五カ年計画(二〇〇六―一〇年)は、「調和のとれた社会」「科学的発展観」「社会主義新農村」など、胡錦濤国家主席ら指導部が発展させてきた方針・政策を盛り込んだものになりました。
中国は改革・開放政策のもと、「社会主義市場経済」を掲げて平均9%程度の高い経済成長を維持してきました。その反面、社会的格差の拡大や汚職のまん延などのひずみも伴いました。
農民を豊かに
今後、中国経済が持続的に発展し、「小康社会(まずまずの生活水準の社会)」の全面的実現という目標を達成するためには、もっぱら経済成長を追求してきた従来の発展観からの転換が求められていました。
同時に、人口の多数を占める農民が豊かになることなしに、今後の成長をはかることができないとの認識や論議もみられました。
「社会主義新農村」の提起は、従来から重視してきた三農(農村、農業、農民)問題を、「近代化建設の全局」にかかわる問題として位置づけ、最重点課題としました。農業税は農村の生活困難の要因でしたが、これも今年から全廃されます。
また、新五カ年計画のなかでは、これまでの輸出・投資優先を転換して、個人消費の拡大を重視しています。経済成長をけん引する柱に内需をすえたことは、中国が市場経済に対応する経験を積み重ね、自国の条件に見合った経済運営をはかろうとしている点で注目されます。
消費を拡大するために、農民や労働者の収入を増やすことが、政府の重点課題として明確化されました。社会保障制度の確立・充実が、国民の生活不安を取り除き、消費支出を伸ばす上で、不可欠であることも論議されました。
環境を大切に
このほか、省エネ型で環境に優しい社会づくりも重視するなど、経済・社会の発展のあり方が大きく転換し、「科学的発展観」を前面に出しています。
他方、国民の利益にかかわる切実な問題の重視も特徴の一つでした。雇用、社会保障、医療、教育、労働災害防止などの課題が具体的数値もあげて示されました。
同時に、温首相が政府報告や記者会見で認めたように、土地収用、立ち退き問題などで、「一部の地方政府が法律に違反し、民衆の切実な利益を侵害している」ことは、ゆるがせにできない問題です。その裏側には、構造的な根深さをもつ汚職・腐敗の問題が存在します。土地を強制的に収用された農民の抗議行動も各地で起こっています。
こうした問題を解決し、「調和のとれた社会」を目指すために、新五カ年計画が「引き続き積極的かつ穏当に政治体制改革を推進」し、「民主制度を健全化し、民主の形式を豊かにし、公民の秩序ある政治参加を拡大する」としていることは注目されます。これも中国の今後にかかわる重要な課題だといえます。 (北京 菊池敏也)