2006年3月16日(木)「しんぶん赤旗」
中古家電販売規制
政府は根本対策に踏み出せ
電気用品安全法(電安法)による新表示「PSE」マークがない中古家電(二百五十九品目)を四月から販売できなくすることが大きな問題になる中、経済産業省は土壇場で、一部製品を対象から除外しPSEマークなしで売れるようにするなどの「緊急対策」を余儀なくされました。業者や消費者、音楽家などの大きな運動が、「ルールの変更はできない」とかたくなな態度をとりつづけてきた政府・経済産業省を揺り動かし始めました。(中東 久直)
「緊急対策」について十五日付朝刊各紙は「土壇場ルール変更」「中古家電規制迷走」「『場当たり的』と反発も」「経産省、苦しい例外扱い」などと経済産業省のどたばたぶりを報じ、「さらなる譲歩を余儀なくされる可能性」(「東京」)を伝えています。
十四日の「緊急対策」を発表した記者会見で二階経産大臣は、「今日はまだこの状況で閣議で決定する」段階でないとして「できるだけのことを行ってみて、その結果はまたご相談したい」と見直しに含みをもたせる発言をしています。
突然のこと
そもそも経済産業省が、中古家電もPSEマークの対象と言ったのは二月中旬で、突然のことでした。リサイクル業者などにとって「寝耳に水」の話でした。たちまち、「中古品を対象からはずして」「猶予期間を延長して」の声が渦巻きました。
経済産業省はどうこたえてきたのか。
「川を渡っている最中で、馬を乗り換えたりUターンをするわけにはいかない。経過措置を認識して対応してこられた方もたくさんいる。そのような中でいまルールを変えることは適切ではない」(九日、経済産業省事務次官記者会見)
“すでに四月から売れなくなるので対象中古品を安売りするなどした業者がいるので、ルールは変えられない”というのです。
ところが、「緊急対策」で一部とはいえルールを変えることにしたのです。
“ビンテージもの”と呼ばれる電子楽器、音響機器、映写機などを適用除外にし、PSEマークをはらないまま売れるようになりました。
国に全責任
「法律通り適用する」の一点張りだった経済産業省が態度を変えることになったのはなぜか。
○法的根拠を示せない―経済産業省監修の法令集にも中古家電を対象にした記述は一切ありませんでした。
○関係者にとって「寝耳に水」だった―中古家電が対象になるといいだしたのは今年二月十日が初めて。
○文化の破壊―ビンテージ品をごみにするのかの追及に政府はこたえられませんでした。
日本共産党の塩川鉄也衆院議員の三度にわたる国会質問、本紙の一連のキャンペーンは、今回の混乱した事態の責任がすべて国にあることを明らかにしました。
「なにも知らされない業者を廃業においこんでいいのか」「日本の音楽と芸術文化に大きな支障をつくりだしていいのか」。国の責任が問われるなかで、「緊急対策」でルールも変えざるをえなくなったのです。
「すべて」を
「緊急対策」での中小業者の「負担軽減」策で何万というリサイクル業者に対応できるのか、“ビンテージもの”とだれがきめるのか、など関係者の不満と怒りはおさまりません。
この混乱を回避するには、リサイクル業者も、音楽関係者などもこぞって指摘しているように、すべての中古品を対象外にすることです。
「ルールは変えられない」という論理が崩れたいま、経済産業省は根本的な対策にふみだすことが求められています。
「緊急対策」概要
◇業者の自主検査支援として(1)検査機器の無料貸し出し(2)電気保安協会による半年間無料の出張検査サービス(3)都道府県の公設試験所による受託検査
◇PSEマーク届出書類の簡素化
◇ビンテージ楽器などを対象外にする
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