2006年3月15日(水)「しんぶん赤旗」
移転反対 岩国市民の選択
海外での反応
米軍再編容易でない/日本政府に大打撃
住民は米軍増強に「ノー」
抗議の引き金に
●英有力紙
英紙フィナンシャル・タイムズ十四日付は、米軍厚木基地の艦載機部隊を岩国基地に移転する計画に、岩国市の住民投票で89%が反対を表明したことについて、「拘束力はないものの」日本政府にとっては「大きな打撃」「ダメージ」となったと指摘しています。
同紙は、日本政府が「安保同盟で米国と結託し、地方の要望を無視する政府だとしばしばみられている」と述べ、岩国の住民投票の結果は「沖縄をはじめ(米軍再編に)関係する他の地域で抗議の波を起こす引き金となりうる」ものだと、その意義を重視しています。
市民は断固反対
●中国・新華社
【北京=菊池敏也】中国の新華社通信は、十二日に行われた山口県岩国市での住民投票の結果について、「四万三千四百三十三票対五千三百六十九票の圧倒的多数で、米空母艦載機部隊を岩国に増派する計画に反対した」と速報しました。
その後、配信された新華社の詳報は、米空母艦載機部隊が岩国基地に移転することになった経過を紹介しつつ、「さらに多くの事故を招きかねず、飛行機の夜間訓練も大きな騒音を出すことから、この案は岩国市民から断固反対された」と伝えました。58%の有権者が住民投票に参加したことも伝えました。
再編に暗い影
●ベトナムTV
【ハノイ=鈴木勝比古】ベトナムのメディアは十三、十四の両日、米軍厚木基地(神奈川県)の艦載機部隊の岩国基地への移転の是非を問う山口県岩国市の住民投票で圧倒的多数が反対したことを一斉に報じました。
ベトナム国営テレビ(チャンネル1)は十三日夜のニュースで「岩国の住民は米軍増強に『ノー』と答えた」と報じました。住民投票の光景を映しながら「それは日出る国に駐留する五万人近くの米軍の再配置計画に暗い影を落とした。岩国の住民は米軍基地による騒音や複雑な社会問題への不安から米軍増強を拒否した」とコメントしました。
同報道は「この結果は他の地方に同様の反応が波及することを東京とワシントンの双方に恐れさせている」とのべながら、安倍官房長官の記者会見の映像を紹介し、「日本政府は住民投票結果のいかんにかかわらず計画を進めることを声明した」と伝えました。
同報道は「岩国への米軍の配置は、地球的規模での米軍の機動性を高めることを目的としたアジア太平洋の米軍再配置計画の一部である」としています。
東京発のベトナムの声放送(電子版)は十三日、岩国の住民が米軍の移転に反対している理由として「軍事機材による騒音公害、基地への財政支援、とりわけ女性や未成年者に対する暴力や強奪などの刑法犯罪の危険」をあげています。
ベトナム各紙十四日付も「岩国住民は米軍再配置計画に反対表明」(サイゴン・ザイフォン紙)などの見出しで岩国の住民投票結果を報じました。
日本政府と協力
●米国務省
【ワシントン=山崎伸治】米国務省のケイシー報道官代行は十三日の定例会見で、岩国市の住民投票で90%が米空母艦載機の移転に反対したことについて、「在日米軍の再編の実施について、日本政府と引き続き協力する」と改めて表明しました。「内政の範囲でこの問題についておきていることを議論したり、話したりすることは日本政府に任せる」とのべ、住民投票結果についての直接のコメントを避けました。
他移転先に勇気
●韓国メディア
韓国の各メディアは住民投票結果に注目。「米軍再編が容易でないことが明らかになった」(韓国日報)、「今回の投票に勇気づけられた基地移転候補地の住民によって、基地移転賛否をめぐる投票が相次ぐ可能性もある」(文化日報)と報じています。
岩国の勝利おめでとう
韓国平和活動家がメッセージ
「岩国住民投票の勝利おめでとう!」―韓国の平和運動家・金承国氏が本紙に喜びのメッセージを寄せました。
金氏は二〇〇三年の原水爆禁止世界大会に平和団体「統一連帯」代表として参加、今年二月には「平和紀行団」を率いて広島県原水協と討論会を開くなど、平和のための日韓連帯運動に献身してきました。
日本と同様に米軍再編が進む韓国では、米軍基地の大幅な拡張が予定されている京畿道・平澤市で住民の反対運動が続いています。
住民運動団体代表の金鍾一氏は、韓国メディアに対し「平澤市民や韓国国民の世論にもいい影響を与えるだろう。昨年の世論調査では、平澤市民の90%近くが基地拡張に反対しているという結果が出ている」と語りました。