2006年3月15日(水)「しんぶん赤旗」

主張

サッカーくじ

経営変えても迷走とまらず


 迷走ぶりがとまりません。この三月に実施六年目を迎えたサッカーくじ(トト=toto)です。

 サッカーくじは、今年に入り経営形態の変更を行いました。銀行への業務丸投げをやめ、文部科学省所管の独立行政法人・日本スポーツ振興センターが、直接運営に乗り出す方式です。中間的な「コストを削減したい」との狙いからです。

売り上げ不振続く

 背景にあるのが、売り上げ不振と多額の債務です。

 売り上げは一年目こそ六百四十三億円でしたが、急激な右肩下がりで、二〇〇五年度は前年の百五十億円すら下回る見込みです。このため、初期投資三百五十億円のうち、二百二十億円が未払いとなっている上、経営形態を変えることで百数十億円の新たな借金を重ねています。

 返済のためには、年間三百三十億円以上の売り上げが必要です。しかし、ファンにそっぽを向かれているなかで、ここ数年の二倍以上の売り上げという目算は、机上の空論でしかありません。実際、三月からの売り上げをみても、前年並みにとどまっています。

 サッカーくじは、民間でいえばとっくに倒産状態ですが、国という後ろ盾があるために、生きながらえているにすぎません。「赤旗」が指摘してきたように、このままでは後始末のため税金投入は必至です。

 当初は好意的だったマスメディアの風向きも変わってきています。

 「他に例を探すのに苦労するほど失敗の連続だった」(「毎日」)、「同じ失敗を繰り返すなら、くじの廃止すら視野に入ってくる」(「読売」)と社説で指摘され、「“勇気ある撤退”も選択肢に加えるときが来るかもしれない」(「東京」)と、「廃止論」が現実のものとなってきています。

 にもかかわらず、文科省は法律にある「七年目の見直し」をやりすごすことしか頭にありません。いまだに国会に現状報告すら行わず、「見直しの具体的な予定もない」、しまいには、「見直しをしないこともありうる」と居直るありさまです。

 税金投入の危機だけではありません。存在自体が、いくつもの問題を生じていることです。

 その一つは、「暴走」ともいえる売り上げアップ策です。二月末から二百四十三分の一の確率の「当たりやすいくじ」を発売し、コンビニエンスストアの一般販売をこっそり始めました。インターネットや携帯電話からも買えるようにしています。

 いずれもサッカーくじの実施にあたって、ギャンブル性を高めないための保障であったり、「十九歳未満の販売禁止」の担保とされてきたものを、きれいさっぱり投げ捨てています。にもかかわらず、みずから国会に報告したものはありません。売り上げしか頭にない「大暴走」ぶりです。

スポーツ振興の足かせ

 いまではサッカーくじがあるためにかえってスポーツ振興の足かせにもなっています。同法が成立した翌年の一九九九年から文科省のスポーツ予算が急減したことに示されています。サッカーくじの目的であるスポーツ分野への助成も、「ない」に等しい状態です。もはや存在意義のかけらも見いだせません。

 文科省とセンターは、まったく当事者能力を失っているといえるでしょう。サッカーくじの廃止を先送りすればするほど、その傷口が広がるばかりです。それを食い止めるためにも、サッカーくじはきっぱりと廃止するしかありません。


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