2006年3月14日(火)「しんぶん赤旗」

区切りの「三位一体改革」

住民生活に深刻な影響

吉井衆院議員に聞く(下)


 ――五兆円を超す地方交付税の削減は地方にどのような影響を及ぼしていますか。

 吉井 予算が組めないという地方からの怒りの声がまず上がりました。

 「三位一体の改革」が本格的に始まった二〇〇四年度に臨時財政対策債を含めた約三兆円もの交付税が減額されました。右肩上がりに増えてきた地方交付税が、初めて、しかも一気に三兆円も減額されたわけですから地方自治体はびっくり、そして「予算が組めない」という怒りに変わりました。

 昨年十一月、〇四年度の自治体の決算の概要が発表されました。どの自治体も歳入の減少に伴って、歳出削減が加速・強化されていることは共通しています。

 また、東京、神奈川、愛知、大阪など税源が比較的豊かな自治体は税収の回復もあって地方税収は3・8%増となり、積立金残高も増えています。しかし、それ以外のところは税収の回復があっても交付税や国庫補助負担金の削減の方の影響が大きく、積立金を逆に取り崩すという二極化の状況を呈しています。

 とくに財源保障機能と財源調整機能を持つ地方交付税の削減が自治体間の財政格差を拡大しつつあると言えます。〇四年度に始まった地方交付税の削減は、〇五年度九千五百五十七億円、〇六年度一兆三千六十五億円とその後も続いていますから、自治体間の財政状況の格差はさらに拡大していると思います。

マイナスの予算

 ――〇六年度の地方財政の見通しについては。

 吉井 自治体の財政運営の指針となる地方財政計画の規模は、五年連続で対前年度マイナスです。都道府県の当初予算が出そろいましたが、それを見ますと、対前年度マイナスの予算編成のところが三十六道府県です。

 その中でも福井が八年、高知は七年、青森、三重、山口、熊本は六年、岩手、山形、茨城、山梨、長野、奈良、鳥取、島根、徳島、香川、愛媛、鹿児島の十二県が五年連続して、当初予算規模が前年度を下回るという状況です。

 総務省自治財政局長は一月の都道府県総務部長会議で「地方団体はこの三年間、厳しい財政運営を強いられてきたが、今後も厳しい状況は続く」と言いました。こうした傾向は続くと思います。

 ――住民生活への影響はどうですか。

 吉井 全体の規模がマイナスという状況の中で、「三位一体の改革」との関連で児童扶養手当や児童手当の地方負担分が増額されます。当然他の歳出に影響が出たり、財源を手数料や使用料の引き上げに求める動きも出てくることでしょう。自治体独自の補助金の見直しもあるでしょう。

過去最大の削減

 いずれにしても歳出削減の圧力がいっそう強くなることが想定されます。とくに来年度は定員削減の圧力がいっそう強くなります。

 この六年間、地方財政計画上の職員を一万―一万二千人減らしてきましたが、来年度は一万人も多い二万二千六百二人も削減する計画です。二万人を超える削減計画は過去にありません。過去最大の削減になります。

 耐震偽装事件では構造計算ができる建築主事が14%しか配置されていないとか、児童虐待事件が増える中で相談にのる児童福祉司の配置状況は国の配置基準を満たす自治体は四割に過ぎないとか、国が定めた最低基準すら守られていない職員配置の現状があります。

 消防職員も「消防力の基準」(以前は「最低基準」との位置づけであったが、規制緩和の中で「指針」と位置づけられるようになった)に定められた職員数の75・5%の職員しか配置されていない。

 何か事件が起きると行政側の対応の遅れや人員配置の貧困さが指摘されますが、耐震偽装問題にしても、児童虐待事件にしても、住民やこどもの命や財産に直接関係する職員です。国の定めた基準に満たない配置状況でどうして住民の安全を守れるのか。

 これは住民サービスが低下するなどというレベルの話ではありません。国や自治体の本来の役割を果たすか放棄するかの根本にかかわる問題です。少なくとも国基準の最低限の配置基準を守らせるために力をつくす必要があります。(おわり)


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