2006年3月14日(火)「しんぶん赤旗」
主張
岩国市の住民投票
審判受け移駐計画を断念せよ
山口県岩国市民は、米空母艦載機部隊の岩国移駐の賛否を問う住民投票を成功させ、移駐受け入れノーの結論を鮮明にしました。
米軍再編「中間報告」後初の住民投票は、投票に行くことすら圧力がかかるなかで実施されました。58%を超える人々が投票に足を運び、九割が移駐反対に○をつけたことが、日米両政府に大きな痛手を与えたのは間違いありません。移駐に反対した市民は、市民全体の半数をも超しています。
9割の重み
政府は、岩国市と住民がくりかえし反対しているのに、「理解を求める」といいつつ移駐を押し付ける政府の横暴なやり方を岩国市民が痛烈に批判したのだということを直視すべきです。
移駐計画は、生活の平穏を脅かし住民を危険においやることが明白です。市民は移駐計画断念を願って住民投票に参加したのです。
厚木基地(神奈川県)から米空母艦載機部隊(五十七機と兵員千六百人)を受け入れれば、岩国基地は米軍機だけで百機以上という、米軍の海外基地のなかでも最大級の航空作戦基地に変わります。いま以上に、夜も昼も米軍機の離着陸訓練の騒音で市民が苦しめられるのは目にみえています。
米兵が五千人にもなれば、凶悪な犯罪の増加につながります。長い間、基地あるがゆえの苦しみに耐えてきた市民も、これ以上我慢できないというのは当然です。
政府は「負担軽減」といいますが、アメリカいいなりで国民の声を伝えもしない日本政府を信頼する人はいません。だから地域住民の生活と安全はみずから守るという流れがつよまっています。
許せないのは、政府が住民投票を無視する態度をとっていることです。
安倍官房長官は「日米の交渉としてこれからも続けていく」、額賀防衛庁長官は「日本の安全保障の面からぜひとも実現しなければならない」とのべました。ラムズフェルド米国防長官から「何が大事かを考えるべきだ」「今度は待ったなしだ」といわれているため、国民の反対の声にかまってはいられないという対米追随の本性があらわれています。だからこそ基地・国防が国の権限であり、住民の意見は必要でないかのようなことをいうのです。しかし、これは憲法をゆがめるものです。
「基地や国防は国の専管事項」論は、憲法に根拠規定がない俗論です。逆に、憲法は国民すべてに平和的生存権を認め、そのうえ地方自治の原則を明記しています。住民投票はこの地方自治の本旨にもとづいて実施されました。
岩国市長は、住民投票を踏まえ、近く政府に反対を伝えるとしています。
政府は、住民投票の結果をアメリカ政府に伝え、移駐計画を断念すべきです。
全国につなごう
日米両政府がすすめる米軍再編は、日本を無法なアメリカの先制攻撃戦争の足場にするものです。
政府はそのため、十二都道県と四十三市町村に圧力をかけています。そのほとんどが再編による“痛み”のたらい回しに反対です。
岩国市の住民投票の結果は各地の運動を励ますものとなりました。
全国が手をつなぎ、沖縄県民が沖縄・辺野古沖の新基地建設計画を断念に追い込んだように、米軍再編計画を断念させましょう。