2006年3月13日(月)「しんぶん赤旗」
教育基本法改悪
「今国会で」与党執念
求心力維持に利用
後半国会に向けて、政府・与党が教育基本法を改悪する動きを強めています。自民党の武部勤幹事長は十日、「教育基本法の改正については、もはや結論を得る段階に来ている。したがって、今国会で成立させる」(党役員連絡会)と明言。小泉純一郎首相も武部氏に、「やると決めた以上は早く最終案をまとめる必要がある」(八日)と、与党内の調整を急ぐよう指示していました。
九日には、自民、公明両党の幹事長、政調会長、国対委員長が会談を行い、教育基本法改定案を今国会に提出し、成立を目指すことで合意しました。両党の執行部が「今国会に提出、成立」を確認しあうのはこれで三度目で、並々ならぬ執念が見て取れます。
もともと、憲法改悪をねらう勢力にとって、憲法と一体の関係にある教育基本法を変えることは宿願です。公明党も、二年前から同法の「改正」で自民党と歩調を合わせ、改定案づくりをともに進めてきました。
同時に、今国会の重点法案として急浮上してきた背景には、「後半国会で、内閣の求心力を維持する目玉法案がほしい」という、与党の政治的な思惑もあります。
国会開会当初、首相が意欲を見せていた皇室典範の改定は、秋篠宮夫人の紀子さんの懐妊で見送りとなりました。防衛庁の「省」昇格法案も、防衛施設庁の談合事件の発覚で頓挫した形です。
このなかで目をつけたのが教育基本法の改悪です。「何かあった方が(小泉首相の)求心力がある。行革推進法案はその一つだし、教育基本法改正案などをぜひ実現したいというときの方が求心力も緊張感もある」(自民・片山虎之助参院幹事長、十日の記者会見)というわけです。
改悪法案づくりを実際に手がけるのは、週一度のペースで開かれている「与党・教育基本法改正に関する検討会」です。八日の検討会では、座長の大島理森元文相が「こうして議論する機会も多くなっており、何とか全体を取りまとめたい」とのべ、合意づくりに改めて意欲を示しました。
ただ、検討会という「密室」で法案づくりが進められ、途中経過が一切公表されていないことは、改悪をすすめる勢力にとっても“不安材料”です。教育基本法をめぐっては、自公間の意見の相違のみならず、それぞれの党内にもさまざまな意見がありますが、党内論議は十分に尽くされていないからです。
大島座長も「ここで決めたものをそれぞれの党に持っていったら、また(いろいろな意見が出て)変になっちゃったとなると、また協議しなければならない。そこは(そうならないように)知恵を出さなければならない」と認めています。
裏を返せば、それだけ教育基本法の改定は「重い」テーマだということです。それを「政権の求心力維持」などという政治的な思惑から利用しようとする与党の態度には、「子どもや教育不在だ」などの怒りの声が教育関係者らからあがっています。(坂井 希)