2006年3月11日(土)「しんぶん赤旗」
国家犯罪に時効認めず
独裁政権の弾圧 賠償判決確定へ
韓 国
【ソウル=面川誠】朴正熙・独裁政権下の一九七三年に韓国中央情報部(KCIA=現在の国家情報院)による拷問で死亡した崔鍾吉教授(ソウル大法学部)事件で十日、遺族に対する国家賠償を命じたソウル高裁判決が確定することになりました。
韓国法務省が国家犯罪に時効はないとした判決を受け入れたことによるものです。
教授は七三年十月に連行されKCIA庁舎内で死亡。KCIAは「スパイ容疑を認めた後、飛び降り自殺した」と発表しました。
この事件について、金大中政権下で設置された「疑問死真相究明委員会」は二〇〇二年五月、拷問による殺害との調査結果を発表。遺族が損害賠償を求め提訴していました。
二月十四日のソウル高裁判決は「国家組織が文書をねつ造して組織的に事実を隠ぺいした事件において、国家が(賠償請求の)消滅時効を主張することは『信義誠実の原則』に反する」と判断。崔教授の遺族に十八億四千八百万ウォン(約二億二千三百万円)を支払うよう政府に命じていました。
韓国の民法は、国家機関や公務員による不法行為に対する損害賠償の時効成立について、事件発生から十年、事件による損害を知ってから三年以内としています。
国会には昨年七月、百四十五人の議員が署名した「反人権的な国家犯罪の公訴時効特別法案」が提出されました。法案は国家犯罪の起訴について時効を認めていません。
日本では戦前の治安維持法による国家犯罪への賠償を求め、一九六八年に治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟が結成されています。日本弁護士連合会も、政府の公式謝罪と補償を勧告していますが、日本政府は応じていません。