2006年3月11日(土)「しんぶん赤旗」
東京都議会の五輪招致決議
大規模開発狙う石原都政
東京都議会は八日、二〇一六年のオリンピックを東京に招致するよう求める決議を自民、民主、公明各党などの賛成多数で可決しましたが、石原都政が進める五輪招致は重大な問題があります。
日本共産党の松村友昭都議は八日の都議会本会議で、「世界の人々がスポーツを通じて交流する『平和の祭典』としてのオリンピックそのものに反対するものではない」と指摘。そのうえで、「巨大開発の口実とされたり、環境破壊につながるような計画とセットにされるのであれば、招致に賛成できない」という立場から決議に反対しました。
石原慎太郎知事は昨年九月都議会で五輪招致を正式表明してから、招致をてこに大型開発を推進する発言を繰り返し、二〇〇六年度予算案に五輪開催準備基金一千億円を盛り込みました。
二月二十二日の施政方針演説では、「コンパクトな大会をめざす」といいながら、五輪開催に向けて幹線道路網の広域的な交通基盤整備や羽田空港の再拡張・国際化、米軍横田基地の軍民共用化を進めることを強調しました。同二十八日の自民党の代表質問に対し、首都圏三環状道路など幹線道路について「十年後の五輪をめざして集中的に整備を進める」と答えています。
都は三環状道路の一つ、外郭環状道路について、国が建設の検討路線にすらあげていないのに、十年間で完成させると説明しています。これでは一兆三千億円の事業費の大半を都が負担することになりかねません。五輪招致を口実に、これらの大型開発を集中的に推進すれば、現在でも七兆円規模の借金を抱える都財政の破たんや環境への重大な影響に直面することになります。
過大な社会資本整備や財政負担への懸念の声は、五輪招致に賛成した会派からも出されたほどです。「都民には福祉を切り捨て、犠牲を押しつけておきながら、オリンピックを口実に不要不急の大型事業には大盤振る舞いをすることは許されない」(松村氏)と、日本共産党が五輪招致に反対したのは当然のことです。
しかも、五輪開催という大事業を、都民の意見も聞かず、開発や財政計画も明らかにせず、秘密裏に進めていることも大問題です。
日本共産党の清水ひで子都議は二月二十八日の代表質問で、五輪で必要となる施設や開発の規模、費用、基金積立目標をただすとともに、著名人を招いた「基本構想懇談会」の議事録や資料を公開するよう迫りました。
ところが、都側は「懇談会の資料や議事録は公表できない」、「開催計画、経費は示せる段階でない」、「基金の積立目標は現時点では未定だ」などと繰り返すだけでした。
松村氏は同決議への反対討論で、招致を表明していた札幌市が五輪開催の場合の経費を試算し、市報で全市民に知らせたうえで、招致を見送ったこと、福岡市も開催概要計画を公表していることを示し、都民の意見も聞かず秘密裏に準備を進める都を批判。また「オリンピック招致をめぐるさまざまな問題について、都民とともに厳しくチェックしていく」と表明しました。(東京都・川井亮)