2006年3月9日(木)「しんぶん赤旗」
主張
量的金融緩和
異常な政策の解除は当然だ
日銀は八、九両日の金融政策決定会合で、金融市場に資金をじゃぶじゃぶ供給する「量的金融緩和」を解除するかどうか議論しています。
金融緩和が家計に与えた影響について日銀の白川理事は参院で次のように答弁しています。一九九一年の利子収入が続いたと想定して推計すると、二〇〇四年までに国民が失った利子は三百四兆円に上る―。
国民の預金利子をごっそり吸い上げてきた異常な金融政策を解除し、正常化に向かうのは当然です。
利子は二百分の一に
九一年の預金金利は一年定期で6%程度でした。日銀の政策金利は九一年前半まで6%で、これ以降引き下げの一途をたどります。九三年には政策金利は3%台から2%台、1%台へと下げられ、預金金利も1%台に急降下しました。
「量的緩和」の下で現在の一年定期の預金金利は平均0・03%です。百万円を預けた場合、九一年には一年後に六万円の利子が付いたのに、いまはわずか三百円、実に二百分の一の利子しか付きません。
大企業への貸出金利は九一年当時の四分の一程度に下がりました。
超金融緩和で得をしているのは、ただ同然の金利で国民から預金を集めて貸し出しに回した銀行と、借金の金利負担を大きく減らした大企業です。反対に大損させられてきたのが資金の出し手の国民です。
中小企業は貸し渋り、貸しはがしの標的にされ、金余りの大企業とは対照的に「金融引き締め」にさらされてきました。
預金金利は金融政策の影響を受けるとはいえ、九一年の二百分の一というのはあまりにも極端です。
大銀行は大もうけしています。トヨタ自動車を超える利益を記録した銀行グループもあります。国民の利子を吸い上げ、血税投入を受けて利益を増やした銀行は、預金金利を引き上げて国民に還元すべきです。「量的緩和」の解除を口実に、住宅ローン金利を引き上げるような行為はやめることです。
「量的緩和」は不良債権の早期最終処理とともにブッシュ米大統領に対する対米公約です。「量的緩和」の拡大も不良債権処理の加速と一体で、小泉首相がブッシュ大統領との首脳会談で誓約しています。
米国のハゲタカファンドは、不良債権の烙印(らくいん)を押された企業を買いたたいて大もうけを上げました。「量的緩和」であふれた資金は米国市場に流れ、財政と貿易の双子の赤字を補い、米国の株価を支えました。
日銀も弊害と認めているように、日本市場では余剰資金が株式市場のカジノ化を進め、大株主と株を持たない人の所得格差を広げました。
国民から利子を奪って大企業・大銀行とアメリカを助け、マネーゲームと所得格差を広げてきた―。これが「量的緩和」の実態です。
家計に資金回る政策へ
竹中総務相らは「量的緩和」の解除をけん制し、解除しても日銀がインフレ策を強めるよう求めるなど日銀の「利用」に固執しています。
小泉内閣は不良債権の強行処理や国民負担増など「構造改革」のデフレ圧力を日銀の金融政策で緩和する方針を取ってきました。しかし失業と倒産は一時最悪の水準を記録し、その後も不安定雇用がまん延して国民の所得は減り続けています。
日銀の金融政策で政府の経済失政をごまかすやり方は破たんしています。大切なのは、家計の資金を吸い上げる政策から、家計に資金が回る政策に抜本転換することです。