2006年3月7日(火)「しんぶん赤旗」
「新自由主義」とは何か 1
『経済』編集長 友寄英隆さんにきく
ライブドア(1) 小泉「構造改革」
批判する新しい動きも
小泉内閣の経済政策の特徴を、「新自由主義」によるものとの指摘が広がっています。「新自由主義」とは何か。『経済』編集長の友寄英隆さんに聞きました。
――最初に、いまなぜ「新自由主義」をとりあげることが大事なのですか。
友寄 具体的な事例で考えてみましょう。今年に入って、東京地検がライブドアの不正を摘発して、堀江貴文前社長が逮捕されるという事態になりました。
この事件は、株式市場に直接大きなショックを与えただけではなく、小泉政権や自民党との癒着関係をめぐって政局にも大きな影響を及ぼしています。若い人たちのなかにあった「現代のヒーロー=ホリエモン」の偶像も揺らぎ始めています。
ところが、小泉首相は、昨年の総選挙で堀江容疑者を応援したことを追及されて「人を見る目がなかった」などと言い訳しました。また、日本経団連の奥田碩会長も、ライブドアの経団連加盟を認めたことは「ミスった」などと述べています。
しかし、事の本質は「人を見る目」とか「ミスった」などといってすませられるようなことではありません。ライブドアや堀江容疑者を生み育ててきたのは、まさに「新自由主義」の立場に立つ経済政策や経済理論そのものだからです。
小泉内閣の「構造改革」が始まってから、日本の政治、経済、社会、教育・文化など、さまざまな分野で「新自由主義」の影響が広がっているといわれます。
そこで、「新自由主義」とはそもそも何なのか、その特徴について少し掘り下げて考えてみたいと思うわけです。
◆“ナベツネ”氏は
――小泉内閣や財界の経済路線とたたかうには、その理論的背景である「新自由主義」をよく知る必要があるということですか。
友寄 それだけではありません。「新自由主義」の影響が広がるにつれて、それを批判する新しい動きもでてきています。
たとえば、最近、テレビ番組を見ていたら、読売新聞社の渡辺恒雄会長が、小泉首相の後継者の条件として、(1)靖国参拝をしないこと(2)「新自由主義」の市場原理主義ときっぱり手を切ること―と述べていました。
“読売のナベツネ”氏といえば、従来のイメージでは、右派ジャーナリズムの代表格です。その人でさえ、「新自由主義はいかん」と考えている。日本のイデオロギー状況に新しい変化が起こりつつあると思いました。
◆私たちとの違い
――変化を敏感につかむためにも、「新自由主義」についてもっと知る必要があるということですね。
友寄 さらに、もう一つ。これは私自身が実感していることですが、「新自由主義」がかかげる市場原理主義の理論を研究していくと、市場原理主義と「市場経済を活用する」という私たちの立場との理論的な違いが、逆によくわかってきます。
ですから、いま「新自由主義」を知ることは、二重、三重の意味で重要になっているわけです。
「新自由主義」の経済理論に焦点をあてながら、その中心的内容、理論的系譜、背景など、多面的にお話ししてみたいと思います。