2006年3月6日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

地方空港 視界ゼロ


 狭い国土に百近くもひしめく空港。需要はあるのか。地方空港建設のツケが市民のくらし・福祉にしわよせされ、まわってくることはないのか―。二月十六日に開港した神戸空港、二〇〇九年春をめどに開港をめざす静岡空港についてお伝えします。


開港から2週間 神戸

中型便で半分が空席

“数字あわせ”

 二月十六日、神戸空港が開港しました。その直後に、神戸市は管理収支計画を発表しましたが、その中身は、単なる数字あわせにすぎません。

 計画は、二〇〇六年度は着陸料が八億円弱、地方交付税や県補助金などを入れて、市債償還分を引いても一億円の黒字。これが、一五年には着陸料が三倍以上の十八億円になり、三億円の黒字になるというもの。

 神戸空港は、一日三十便までという制限があるため、機材の大型化によって、着陸収入が増大する計画になっています。初年度、大型三便、中型六便、小型十六便が就航していますが、十年後には、ジャンボ四機、大型四機、中型十機、小型十一機へと大型化が進むという見込みです。

 しかし、黒字を出すために必要な着陸料を逆算しただけとしか思えない根拠のない数字です。

 着陸料収入が最も高いジャンボジェット機は、もう国内線では使わない方向であり、四便が神戸空港に就航する可能性はゼロです。また、開港した二月、路線ごとの搭乗率を見てみると、開港直後のキャンペーンがあったにもかかわらず、仙台便で43―55%、熊本便で37―50%にとどまっています。不採算路線は、撤退する可能性があります。着陸料が増える楽観的な要素はありません。

交付税繰入れ

 さらに、建設にかかわる市債の元利償還分として、交付税を計算どおり全額、一般会計から繰り入れます。しかし交付税は、市の判断で市民の福祉やくらしに重点的に使うことができるお金です。日本共産党の金沢はるみ議員の追及に対し、神戸市助役は「自分のところ(空港会計)が赤字になるのに、どうして他に交付税をまわすようなことをするのか」と、声を荒らげました。ここに、神戸市の姿勢がはっきりとあらわれています。

 管理収支の見込み違いのツケが、市民のくらし・福祉にまわされてはなりません。今後、計画のまやかし、現実との違いを監視・追及しつつ、震災直後から「神戸空港に市税は使わない」としてきた市民との約束を神戸市に守らせる、市民の運動が求められています。

 (瀬戸恵子)


3年後に開港予定 静岡

赤字のツケは住民に

“禁じ手” 使ったが…

他人が土足で

 羽田・成田のある東京と、中部国際空港のある愛知の中間に位置し、県内に新幹線駅が六駅、東名高速も走る静岡県。新幹線品川駅開設や県内各所からの中部国際空港直行バス運行で近隣空港へのアクセスが向上し、静岡空港の必要性は先細るばかりです。こうした中、静岡県は二〇〇九年春開港をめざして工事を強行し“禁じ手”の、未買収地の強制収用手続きにふみきりましたが、静岡空港は視界ゼロの暗礁にのりあげています。

 強制収用を認めた〇五年七月五日の国土交通省中部地方整備局による土地収用事業の事業認定告示に対し、反対地権者ら七十四人(二次提訴分含む)が同月、認定取り消しの裁判を静岡地裁に起こしています。

 モモとミカンを栽培する反対地権者の松本吉彦さん(62)は「空港建設を許すかどうかは私だけの問題ではありません。県民の合意のない、税金を湯水のようにムダ遣いする空港に土地を提供するつもりはありません。真の民主主義社会実現のためのたたかいと考えています」と話します。

 県は昨秋、強制収用に必要な土地物件調書作成のため、県職員と業者の五百人態勢で現地立ち入り調査を実施。「自分の家に他人が土足で入ってくるような調査は認めない」と反対地権者の大井寿生さん(46)は午前四時前から現地で対応。「多勢に無勢で現場は混乱し、つき飛ばされるなど乱暴でずさんな調査だった」と言い、「静岡空港は『公共の利益』に名を借りた税金のムダ遣い。“ダメなものはダメ”と言い続けなければ同じようなことが繰り返される」と力を込めました。

「民活」いうが

 県は静岡空港の運営について、ターミナルビルだけでなく、空港基本施設の運営まで民間会社に委託するのは「地方空港で初めて」と「民活化」を誇示。石川嘉延知事は「県民くらし満足度日本一」を掲げた〇六年度予算案で静岡空港建設に百十一億円余を計上し「民間ならではのノウハウを生かしたサービスの提供と効率的な空港運営」への期待をのべました。

 しかし、「民活化」には落とし穴があります。県は着陸料などの収入と無関係に、空港運営会社に対しコストに基づく委託料を支払うという仕組みのため、委託料が着陸料などの収入を上回れば、県からの持ち出しとならざるをえません。

 県は静岡空港の需要予測を二回下方修正し、東京・大阪便などドル箱路線のない四路線で年間利用者百六万人を見込むとしていますが「静岡空港・建設中止の会」は就航先の新千歳、福岡、鹿児島、那覇の四路線のうち鹿児島線は成り立たず、残る三路線で三十六万人との試算結果を出しています。

 静岡空港建設に県議会で唯一反対を貫いてきた日本共産党静岡県議団(三人)の花井征二団長は、「空港運営は民間会社だと言いながら社長は県の元秘書課長、環境部長というれっきとした知事子飼いの幹部で、参画各社が責任逃れしようとしていることからも赤字必至。県民合意のない空港建設をストップさせるためこれからもがんばりたい」と話しています。

 (静岡県・森大介)


 静岡空港 島田市、牧之原市の山林に建設中の第三種空港で総事業費千九百億円。管理面積約百九十ヘクタールと周囲部をあわせた全体面積は約五百ヘクタールで滑走路は長さ二千五百メートル。愛称をつけた空港運営会社「富士山静岡空港株式会社」が二月、県内十企業により設立。〇一年、同空港建設の是非を問う住民投票条例制定請求が署名二十七万人分(県有権者の約一割)とともに県議会に提出されましたが自民党などの反対多数で否決されました。


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