2006年3月6日(月)「しんぶん赤旗」

米解禁文書 再機密化に懸念

研究機関や研究者


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(写真)解禁された米政府機密文書が保管され、一般の人たちも閲覧できるようになっている米公文書館=4日、米メリーランド州カレッジパーク(山崎伸治撮影)

 【ワシントン=山崎伸治】ブッシュ米政権のもとで、過去に米政府が機密扱いを解除し公開した公文書が、再度機密にされるという事態が急速に進んでいます。公文書を扱う研究機関や研究者が懸念を表明し、議会での公聴会も予定されています。

 米政府解禁文書を系統的に調査・研究している民間組織「国家安全保障公文書館」は二月二十一日、報告書を発表し、米中央情報局(CIA)や国防総省、司法省など六つの政府機関が、かつて解禁された政府文書を再度、機密扱いに戻す「工作」を行っていると告発しました。いったん解禁され、メリーランド州カレッジパークにある米公文書館で公開された九千五百件、五万五千五百ページに及ぶ公文書が、ふたたび国民の目から隠されてしまったといいます。

同時多発テロ以降に拍車

 米国では、二十五年を経過した政府の公文書は原則として公開されることになっています。

 クリントン大統領は一九九五年四月の大統領令で、九九年までに公開を徹底するよう求めましたが、そのなかで「諜報(ちょうほう)源や(収集)方法、暗号、進行中の戦争計画」に関する文書が対象外とされました。これを根拠に、いったん公開した文書を再び機密扱いするようになりました。しかしブッシュ政権下で、ことに二〇〇一年九月の同時多発テロ事件以降、この傾向に拍車がかかっているといいます。

 二月二十一日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、歴史家のマシュー・エイド氏がかつて入手した解禁文書が、二〇〇一年十月に再度機密扱いになったことを紹介。解禁文書をまとめて公刊する米国務省の『米国の外交』にも掲載された八つの文書も機密扱いに戻されていると指摘しています。

 その一つは、一九五一年四月二十七日付の「諜報評価」です。そのなかで朝鮮戦争に関し、CIAが五〇年十月の時点で、中国参戦は「一九五〇年にはありえない」との見通しを示していたことが記されています。実際には、中国は同年十一月に参戦しており、歴史的に誤りであることが明らかになっているもの。ブッシュ政権はこの文書を再度機密扱いにしてしまいました。国家安全保障公文書館は、「米国の国家安全保障を損なう」からとは考えがたく「恥ずかしいから」ではないかとしています。

米下院委員会公聴会開催へ

 こうした批判を受け、米政府の公文書を保管・管理する「米公文書館」は三月二日、CIAなどに対し、この問題での監査終了まで、解禁文書を再度機密扱いにすることを中止するよう指示しました。また四日付の米紙ワシントン・ポストは、米下院政府改革委員会が十四日に公聴会を開くと報道しました。公の場で実態が明らかにされることになりそうです。


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