2006年3月6日(月)「しんぶん赤旗」
中国全人代が開幕
農業・農村問題を重視
「調和とれた社会」呼びかけ
温首相報告
【北京=菊池敏也】中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が五日、北京の人民大会堂で始まりました。日程は十日間。温家宝首相が「第十一次五カ年計画(二〇〇六―一〇年)」の提案説明をふくむ政府活動報告を行いました。
温首相は、昨年9・9%の経済成長をとげた中国経済について「成長が比較的速く、効率も比較的良く、価格も安定するという好ましい状況が現れた」と評価。今年の成長率を8%前後、第十一次五カ年計画での成長率を年7・5%にすることを提案しました。
同時に、中国の経済・社会が直面する問題点として、▽食料増産と農民の収入増が難しい▽固定資産投資の伸びが高すぎる▽一部の産業で生産能力の過剰が顕在化している▽炭鉱や交通機関での大事故が頻発している――ことなどをあげました。また幹部の汚職腐敗について厳しく警告しました。
これらの成果と問題点をふまえ、温首相は「科学的発展観」を具体化し、国民の「切実な利益にかかわる問題」の解決を最優先させ、「調和のとれた社会」の建設に力を入れるよう呼びかけました。
温首相がとくに力点を置いたのは「社会主義新農村」の建設で、この課題を「小康(まずまずの生活ができる)社会」の全面的建設と近代化建設の全局にかかわる「重要な歴史的任務」と位置づけました。
そのうえで、三農(農業、農村、農民)問題の解決のために、昨年より四百二十二億元(約六千億円)多い三千三百九十七億元(約五兆円)の財政支出をすると述べました。また、今年から全面的に農業税を廃止したことについて、「画期的な重大変革」と評価。今後二年間で、農村での九年制義務教育の学費・雑費を無料化する方針も示しました。
産業構造の調整に関連して、温首相は「自主的創造革新能力」を全面的に強化すること、省エネルギーで環境に優しい社会をつくることの重要性を訴えました。新五カ年計画では、二〇一〇年の時点でエネルギー消費量を20%削減する目標を提起しました。
温首相は、国民に向けた施策の重視とともに、「社会の安定」の重要性を改めて強調。「大衆の苦情の解決に努め、その矛盾をいち早く解消する」と述べました。民主政治の課題に触れて、「民主制度を健全化し、その形式を豊富にし、公民の秩序ある政治参加を拡大する」と強調しました。
全方位外交を強化 温首相
【北京=菊池敏也】中国の温家宝首相は五日、政府活動報告のなかで外交政策に簡略にふれ、「平和五原則を基礎に全方位外交を強化する」との方針を示しました。発展途上国や中国の周辺諸国との関係を重視するとともに、「先進諸国との共通の利益を拡大し、相互間の食い違いを適切に処理し、交流と協力を推進する」と強調しています。
昨年までの報告にみられた「覇権主義と強権政治に反対する」との表現はなく、四月にも予定されている胡錦濤国家主席の訪米を控え、両国関係の発展を重視する中国政府のシグナルとの見方もあります。
台湾問題
「対話と交渉の 回復に努める」
【北京=菊池敏也】中国の温家宝首相は五日、政府活動報告のなかで台湾問題について、「平和的統一、一国二制度」の基本方針と「『台湾独立』の分裂活動に反対し、決して妥協しない」などの立場を再確認し、「一つの中国」の原則をふまえて、「(台湾海峡)両岸の対話と交渉の回復に努める」と表明しました。
温首相は、「両岸関係が平和・安定、互恵・ウィンウィン(ともに勝利者となる)の方向へ発展することは、人心の赴くところであり、大勢の破壊をたくらむいかなる者も、失敗することが運命づけられている」と強調し、「国家統一綱領」の事実上の廃止を決めた台湾当局を批判しました。