2006年3月6日(月)「しんぶん赤旗」
「思いやり予算」特別協定
米軍に至れり尽くせり
2年延長狙う政府・与党
「暫定」措置が20年以上に
政府・与党は、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する日米特別協定を二年間延長する新協定について、国会での早期承認を狙っています。医療改悪など国民に負担増を押し付ける一方、米軍には至れり尽くせりの「思いやり」を続けようとしています。
地位協定に違反
在日米軍への「思いやり予算」は、▽基地の施設建設費▽日本人従業員の労務費▽光熱水料▽訓練の移転費―の四つに分かれています。このうち労務費の一部と光熱水料、訓練移転費の負担を定めているのが、特別協定です。二〇〇六年度政府予算案の「思いやり予算」は二千三百二十六億円で、このうち特別協定分は千三百八十八億円に上ります。
「思いやり予算」は、在日米軍の特権を定めた日米地位協定にも違反するものです。同協定は、在日米軍の維持経費について、基地の提供を除き、「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記しています。
ところが、日本政府は一九七八年度予算から、「思いやりの精神で米軍駐留費の分担増に応じる」(金丸信防衛庁長官=当時)として、「思いやり予算」の計上を強行しました。
当初は、日本人従業員の労務費の一部(社会保険料の事業主負担など)を負担(約六十二億円)するものでしたが、七九年には、施設建設費や従業員の語学手当などの負担も開始。八六年には、八百十七億円にまで膨れ上がりました。
次々に答弁覆し
膨張を続けた「思いやり予算」は、政府の解釈からみても、これ以上拡大できない段階に達しました。しかし、米側の要求には際限がなく、日本側がさらなる負担増に踏み出すために結んだのが、特別協定です。
政府はこの特別協定によって、それまでの国会答弁を次々に覆し、「思いやり」の範囲をいっそう拡大しました。
――「労務費のこれ以上の負担は地位協定の解釈上無理」(八〇年、玉木清司防衛施設庁長官=当時)としていたのに、新たに従業員の退職手当など八手当の負担を開始(八七年の特別協定)。
――「(米軍関係の)光熱費については、地位協定上(負担)できない」(八二年、外務省の浅尾新一郎北米局長=当時)としていたのに、光熱水料の負担を開始(九一年の特別協定)。
――「訓練、演習そのものの経費は、米軍が負担すべき経費だ」(九五年、外務省の時野谷敦北米局長=当時)としていたのに、「訓練移転費」の名目で、米軍の訓練費の一部負担を開始(九六年の特別協定)。
政府も、こうした負担がそれまでの見解に反することを自覚していました。そのため、特別協定は「暫定的、一時的、限定的な、特例的な措置」(八七年、外務省の藤井宏昭北米局長=当時)と強調していました。しかし、「暫定的」どころか、二十年近くも続き、さらに延長されようとしているのです。
その結果、これまで「思いやり予算」に注ぎ込んだ国民の税金は、総額で約四兆七千億円にも上っています。
今回の特別協定は、これまで五年間だった延長期間を二年間に短縮しています。しかし、それは、沖縄の米海兵隊のグアム移転費をはじめ在日米軍再編経費を日本側が負担しようとしているからです。その負担額について日米両政府が協議中のため、暫定的に二年間としているだけです。
米領の基地にも
しかし、米国領にある米軍基地の増強費まで負担するなど、世界にも「例はない」(外務省の河相周夫北米局長、二月二十日の衆院予算委員会)ものです。移転する海兵隊を抱える沖縄の地元紙も「まともな主権国家ではあり得ないことではないのか」(沖縄タイムス二月二十日付社説)と批判しています。
(田中一郎)
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