2006年3月6日(月)「しんぶん赤旗」
主張
外務省機密費
情報公開でウミ出しきれ
国会が民主党のメール問題でゆれ続けていた先月二十八日、東京地裁で重要な判決が言い渡されました。外務省が機密費(報償費)についての情報公開請求を拒否したのは不当だとして全面的な開示を命じました。腐敗流用の疑いのある機密費にメスを入れる道を開くものです。
「外交機密」の壁破る
裁判は、行政情報の開示を求める活動をすすめている民間非営利団体「情報公開市民センター」が二〇〇一年に起こしました。当時、外務省高級官僚の内閣官房機密費流用事件を契機に、機密費の閉鎖性が問題になり、市民センターが情報公開法を使い、外交機密費の支出にかかわる資料の公開を請求しました。外務省はすべての情報の公開を拒否する「不開示」を決定し、同センターはこれを不当と訴えていました。
裁判を通じて外務省は、機密費は「国が国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため」の経費であり、その具体的使途が明らかになれば「国の安全が害され、国際交渉上の不利益を被る」と主張しました。「外交機密」を盾に、一律に情報公開を拒む外務省の硬直した姿勢が通用するのかが争われました。
会計検査院の指摘で一部が開示された外交機密費の使途のなかに、天皇誕生日の祝賀レセプションのための支出や高級ワイン、絵画の購入費などが含まれていました。判決はこれをあげ、「『公にしないことを前提とする外交活動』以外の経費支出に関するものが相当数あると推認できる」と認定しました。「支出対象に関する基準や運用のあいまいさ」を厳しく批判したのです。
不開示の決定をする合理的な理由があることを立証する責任についても争われました。判決は行政機関の側にあると指摘し、外務省が「その責任を果たさないまま、開示に伴う弊害発生のおそれを理由にして、その全部を不開示とすることを情報公開法が容認しているとは解されない」としました。外務省の態度は許されないという判断は明確です。
機密費をめぐる腐敗の闇は、あまりにも深いものです。
〇一年の外務省の事件のさい、日本共産党は国会で「報償費について」と題する内閣官房文書を暴露しました。そこには一九八八年から八九年にかけ消費税導入が問題になったさい、合わせて十億円もの巨費が「国会対策」費として計上され、使われてきたこと、外務省の機密費が毎年十数億円も内閣官房に「上納」されるなど財政法違反が常態化していたことが生々しく示されていました。
国民の税金が「機密費」の名に隠れて、国会議員の海外旅行のさいの「せんべつ」や日本共産党をのぞく野党の工作など国会対策、選挙費用にまで流用されていました。「国が国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため」という表向きの理由とはおよそ無縁の腐敗政治の財源として利用されていたのです。
今回開示が認められたものに限らず、機密費の全容に徹底してメスが入れられるべきです。
腐敗政治と決別を
事件当時、外務省の機密費は年間五十五億円にのぼっていました。その後減額されたとはいえ、いまも年間三十億円もの巨額の金が「機密」のベールのなか、国民の監視を受けることなく支出されています。
外務省は判決を重く受け止め、機密費をめぐる実態の全容をすすんで開示すべきです。情報公開の波のなかで、ウミを出しきり、腐敗政治と決別することが求められています。