2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」

共産党の質問

小泉政治の根源突く

“本当の味方見えてきた”


予算案衆院通過

 二〇〇六年度予算案が二日、衆院を通過しました。民主党が永田寿康衆院議員の「偽メール」問題で全面謝罪に追い込まれたことで、「ピンチに陥ると福の神が支えてくれる」(二月二十四日)とご機嫌の小泉純一郎首相。しかし、米国産牛肉輸入再禁止、耐震偽装、ライブドア、防衛施設庁談合事件に加え、格差拡大など、「小泉改革」の害悪が消えたわけではなく、参院での予算審議でも問われます。この間の論戦でみえてきたものは――。(国会取材団)


在日米軍再編

“圧力メール”が反響

 在日米軍再編では、米軍と自衛隊の基地を抱える自治体が一斉に猛反対の声をあげています。このなかで日本共産党の井上哲士参院議員が暴露した、防衛施設庁による“圧力メール”の存在に多くのマスメディアが注目しました。

 防衛施設庁が、全国の出先機関に「(地方議会が反対)議決をしないよう関係者の理解を求める動きをして欲しい」と指示した電子メールです。

 神奈川や沖縄といった基地を抱える地方紙が大きく報道。沖縄タイムスは社説で「民意への姑息(こそく)な介入」と、施設庁のやり方を批判しました。

 志位和夫委員長は衆院本会議での代表質問で、在日米軍再編の特徴の一つ“殴り込み”態勢の強化が、いかに異常かを告発しました。

 米軍再編が沖縄の負担軽減につながるのか。赤嶺政賢衆院議員は、沖縄のキャンプ・シュワブ沿岸部への新基地建設計画が、一九九六年に日米両政府が合意したSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告に比べても、基地の固定化・強化を押しつける中身になっていると批判しました。(二月八日)

 米軍再編が大きな国民負担になることも明らかになりました。笠井亮議員は、二月二十日の衆院予算委員会で沖縄に駐留する米海兵隊のグアム移転費約七十六億ドル(八千百三十二億円)の相当部分を日本政府が負担しようとしていることを「世界でも類例がない」と告発しました。

施設庁談合

天下り全面禁止要求

 天下り先企業への優先発注を指示していたことが明らかになった防衛施設庁の官製談合事件――。日本共産党は、事件の温床になっている高級官僚の天下り全面禁止を求める論陣を張りました。

 防衛施設庁幹部の逮捕直後の参院予算委員会(二月一日)で、井上議員は「天下りの禁止に全面的に踏み込むべきだ」と要求。小泉首相は「改善策として何があるかよく検討する必要がある」と答弁しました。

 政府・防衛庁は、防衛施設庁の解体・防衛庁への統合で、収拾をはかろうとしています。

 これに対し、日本共産党は、今回の事件にかかわり、防衛庁そのものの責任を追及しました。

 ――企業が防衛庁に提出する“天下り申請書”の書式を防衛庁が作成していることを示し、防衛庁でも天下りが組織的に行われていると告発(同三日の参院外交防衛委員会で緒方靖夫議員)

 ――防衛庁が、予定価格と落札額が一致する落札率100%が異常に多いことを、すでに二〇〇四年の時点で知りながら、まともな対策をとっていなかったことを暴露(同十四日の衆院予算委員会で笠井亮議員)

 ――九八年の調達実施本部背任事件後も、防衛庁で装備品をめぐる水増しや談合事件が相次いでいることを示し、「施設庁解体は、防衛庁の省昇格や米軍再編を進めるためだ」と追及(同二十二日の衆院予算委員会で赤嶺政賢議員)

格差拡大

雇用政策の転換求め

 小泉「構造改革」路線が始まってから五年。生活保護世帯が百万世帯を超え、貯蓄ゼロ世帯は四世帯に一世帯にまで増えました。「格差社会」の実態はマスメディアでも大きくとりあげられ、国会でも論戦になりました。

 「改革」を推進してきた与党からも格差拡大の指摘が続き、事実を否定しきれなくなった首相は「格差が悪いとは思わない」と開き直りました。

 格差拡大は何によってもたらされたか。根源をついたのは日本共産党でした。

 「首相の目には貧困と格差のなかで苦しむ庶民の姿は目に入らないのか」(一月二十四日衆院本会議)。志位和夫委員長は代表質問でこう迫りました。

 市田忠義書記局長は「禁止されていた派遣や請負などを、大幅に認めた労働法制の規制緩和が相次いで強行された」(一月二十五日参院本会議)と指摘。佐々木憲昭議員は、「非正規雇用が増えたのは政府の政策に原因がある」(二月七日衆院予算委員会)と雇用政策の転換を求めました。

 一方、労働法制の規制緩和に賛成してきた民主党は格差拡大の根本原因にはふれず、「正社員以外が増加」(前原誠司代表)などと現状を指摘するにとどまりました。

 定率減税の全廃、医療改悪など大幅な負担増を盛り込んだ予算案。日本共産党は、「小泉『改革』にストップをかけ、国民のいのち・暮らし・雇用・営業など、国民生活と経済社会の基本にかかわるところを政治がしっかり支える予算にすべきだ」として、抜本的な組み替え案を提出しました。組み替え案提出は共産党だけでした。

耐震強度偽装

民間任せは安全軽視

 「民間でやれることは民間に」という掛け声で、国民の命と安全までないがしろにしてきた――。序盤の論戦で焦点となった耐震強度偽装問題では、集中審議も行われました。

 「民間開放の進展で(建築確認・検査)制度の実効性が増した」と小泉首相は規制緩和を美化しましたが、法改悪に賛成した他党からも規制緩和が問題の根本との指摘が相次いでいます。

 一月二十五日の参院本会議で、日本共産党の市田書記局長は、一九九八年の建築基準法改悪で建築確認を民間任せにした政府の責任を問いました。

 民主党は、九八年法改悪に唯一反対した日本共産党の指摘を当時の議事録からひきながら、「事態は容易に予測できた。国の責任が問われている」と質問しました。

 共産党は、建築行政そのものの転換を求める議論を展開しました。穀田恵二衆院議員は「現行の耐震基準は本当に安全か」と指摘して基準の引き上げを提案。コスト削減をもてはやす建設業界の風潮を改めるよう求めました。(二月二十四日、衆院国土交通委員会)

 被害住民の生活再建問題では、小林みえこ参院議員が住民の抱える住宅ローンの問題を解決するように要求しました。二月二日の参院予算委員会で、小林氏が「多額のローンに加え、(マンション建て替えで)新たなローンが加わる」「こんな理不尽なことがあっていいのか」と訴えると、与党議員からも拍手が起きました。

米牛肉輸入

米国いいなりただす

 成田空港で特定危険部位の脊柱(せきちゅう)付き米国産牛肉が発見されたのは、国会開会日の一月二十日でした。

 日本共産党国会議員団の紙智子農水部会長・参院議員は「多くの国民の不安や反対の声を押し切って輸入を強行した政府の責任は重大」とコメントを発表。米国内すべての日本向け牛肉処理施設の厳重な査察を行い、必要な措置をとるべきだと求めました。

 同じ牛肉輸入でもカナダとは指定施設の立ち入り検査を合意しているのに、米国には「代表的サンプル」の評価で済ませています。紙議員は二月三日の参院農水委員会で、この事実を指摘し、米国に甘い条件での輸入再開を批判。二月下旬には米国現地調査を行いました。

 “輸入再開前に現地調査する”との閣議決定を覆した問題で衆院予算委員会が深夜まで紛糾した一月三十日。高橋千鶴子議員は「閣議決定や国会答弁がこんなにも軽いものなのか」と抗議しました。

 偽りはこれだけではありませんでした。政府は輸入再開後に日本向け(牛肉の危険部位除去の)ラインの現場作業を確認するとしていました。しかし二月十五日の高橋議員の質問で現認していなかったことが明らかになりました。

 輸入再開先にありきで、食の安全よりアメリカとの約束を優先する小泉内閣の姿勢があらわになっています。

ライブドア

規制緩和万能を批判

 小泉首相はライブドア事件への反省もなく、施政方針演説で「貯蓄から投資へ」とあおりました。

 ライブドアが用いた「錬金術」は、株式分割などの規制緩和で可能となったものです。日本共産党は、「根本にある自民党政治がすすめた規制緩和万能路線」(志位委員長代表質問)を追及する論戦を展開。与謝野馨金融担当相は、大門実紀史参院議員の質問に、株式分割でもうけるのは「邪道」と問題を認め、規制づくりを検討せざるをえなくなっています。

 しかし、小泉首相は規制緩和で「多くの便益をもたらした」と開き直り、事件による株暴落で生活資金を失った人にも「基本的には自己責任」などと冷たい態度をとりつづけています。

 また質疑をつうじて、ライブドア前社長の堀江貴文被告の総選挙での応援は、政府・自民党あげてだったことが明らかになりました。「小泉内閣は規制緩和でマネーゲームを助長し、ついにはマネーゲームの代表人物を衆議院に送り込もうとした」(佐々木衆院議員)のです。

 佐々木議員は、大銀行や大証券、投資ファンドに都合のいい規制緩和ばかりをすすめる規制緩和万能路線から、「額に汗してまじめに働く国民に光のあたる政治に転換すべきだ」と求めました。


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