2006年3月2日(木)「しんぶん赤旗」

“卒業式は子ども中心に”

「日の丸・君が代 」

都教委は押し付けやめて


 卒業式が三月初旬から始まります。新たな出発を祝う場で、年々強まる「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱の強制―。生徒が起立して斉唱しなければ問題視するという、「内心の自由」をも踏みにじる東京都の新たな事態に、教職員や生徒、父母が立ち上がっています。


父母らが運動

 「自分の子がこんな目にあったら、どう思うんですか!」

 二月二十三日、東京都庁内の会議室。都教育委員会のメンバーを前に、都立高校の保護者と卒業生の保護者約四十人が怒りをぶつけました。

 要請したのは都内三十一校の保護者たち。「子どもの人格を認めない指導に震えがくる。親として、どうしても反対したい」。こぶしをぎゅっと握りしめ、「日の丸・君が代」強制反対を訴えました。

 都教委が「日の丸・君が代」を強制する通達(10・23通達)を出してから三年目―。昨年十二月八日の都議会で、中村正彦・教育長は、こう答弁しました。

 卒業式で生徒の多くが起立しなかった場合、他の学校に波及させないため「生徒を適正に指導するむねの通達を速やかに発出いたします」と。自民党の古賀俊昭都議の求めに答えたものでした。

 卒業式での「君が代」斉唱の際、立たない、歌わないことなどを理由にした教職員の処分は、これまでに三百人をこえました。しかし、「生徒が立たないのは教職員の責任」という方針を明確に打ち出したのは、今回が初めて。全国でも例がありません。

 “脅し”ともいえる教育長発言に、「事前に生徒へ指導をしたいという校長も出ている」といいます。

 先生のために、立たなければいけないのか―。戸山高校三年生の男子生徒は「先生を“人質”にとって指導しているようで悲しい」。苦悩する心のうちを語ります。

 教師歴三十年以上という男性教師(53)は「生徒の内心の自由を侵すことだけは食い止めたい」といいます。

 教職員や生徒が議論しながらつくりあげてきた卒業式。しかし、三年前の通達で「一変」しました。「生徒には、主体的に考えるようにといつも教えてきた。“最後の授業”である卒業式を都教委は踏みにじっている。門出にふさわしい式をどうつくっていくか。職場の中と外、あきらめないでたたかっていきたい」

 多国籍の生徒が学ぶ国際高校は、保護者や生徒有志が、約百二十人の賛同署名をそえて強制反対の要請書を都教委へ提出しました。

 保護者の一人で在日朝鮮人の女性はいいます。「何にでも『はい』としかいえない先生と生徒をつくり、この国は一体何をしたいのか? 強制の先にあるものを考えると不安でたまらない」

 東京都高等学校教職員組合では各学校を基礎に、都教委が生徒への強制をおこなわないよう保護者やPТАによびかける運動を展開。東京都障害児学校教職員組合や東京都教職員組合でも、各学校で子どもが中心となった卒業式をおこなうため、保護者や地域の協力をよびかけ、創意工夫をしながら取り組んでいます。

 強制に反対する保護者でつくる「学校に自由の風を! ネットワーク」は、保護者や生徒を対象にしたホットラインを開設。保護者の運動も広がっています。


 10・23通達 国旗は舞台正面の左、都旗は右。教職員は国旗に向かって起立し、斉唱する―など式のやり方を細部まで決めた「実施指針」。校長の職務命令に従わなかった場合、責任が問われるとしています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp