2006年3月1日(水)「しんぶん赤旗」
主張
道州制導入
自治体がますます遠くなる
首相の諮問機関である地方制度調査会(地制調)が、四十七の都道府県を廃止し全国を九から十三の区域に分ける道州制導入の答申を提出しました。戦後の地方自治制度の大改編の危険をはらむ、重大な方針です。
住民の立場を欠く
地方ではいま、国の方針にもとづいた市町村合併が急速にすすんでいます。答申は、地方の行政を広域になった市町村と新しく設ける道州の「二層」でおこなうとし、道州を「地方分権改革の確かな担い手」だとしています。
小泉首相は「構造改革」の中で、「地方にできることは地方に」といいつづけてきました。しかし実際にやったのは、住民の意思を無視した合併押し付けであり、「三位一体改革」と称して国から地方への財政支出を削減し自立性の拡大を妨げることでした。いまさら「分権」などといっても地方には通用しません。
合併によって広域化した市町村では、公共施設が遠くなるなど住民サービスの低下が大問題になっています。政府の勝手な理屈で都道府県を廃止し、広大な道州にすれば、今でさえ住民に縁遠いといわれる都道府県がますます住民から遠くなります。住民の多様な要求にきめ細かくこたえ、住民が直接参加して意思決定できる制度でこそ、地方自治は成り立ちます。道州制導入は、文字通り地方自治と自治体を住民から遠ざけるものです。
だいたい道州制の導入は、自治体や住民が求めたものではありません。そうではないのに、国が新しい区割りの案まで示して再編を上から押し付けようとするやり方は、自治の原則に反します。昨年十二月の地方制度調査会総会では、委員から「国民合意を前提に慎重な検討が必要だ。まだ議論が未成熟だ」という意見も出ていました。
にもかかわらず政府が性急に道州制導入の道筋をつけようとしている背景には、財界の要求があります。財界は、広域の地方制度の導入を繰り返し提言してきました。
日本経団連が〇五年一月に発表した提言「わが国の基本問題を考える」では、中央政府の役割は外交、軍事などに限り、国民生活や企業活動に密着したインフラ(基盤)整備や住民サービスは地方がおこなうようにするとしたうえ、行政サービスの「整理削減・効率化」「州制の導入」を求めています。
自治体による住民サービスはさらに切り縮めながら、広域自治体を受け皿に自分たちのもうけになる大型プロジェクト、むだな公共事業を機動的にすすめようという財界の意図は明白です。
今回の答申も、国の役割は外交、軍事などに絞り、道州の担う役割の第一には「圏域を単位とする主要な社会資本形成」をあげています。答申が財界要求にこたえたものであるのはあきらかです。
国の責任投げ捨てる
答申は、国から道州へ、道州から市町村へ仕事を移すといいます。内政の事務はほとんどを地方がおこなうことになりますが、地域格差があってはならない教育や福祉の水準はどう維持するのか。国が国民のくらしにかかわる仕事への責任を放棄し、身軽で「小さな政府」になるというのでは、国民はたまりません。
いま国民が求めているのは、住民の暮らしと権利を守り、地方の財源を拡充させるなど、地方自治をいっそう発展させることです。市町村合併の押し付けとともに進められる道州制導入は、そうした方向に真っ向からそむくものです。