2006年2月28日(火)「しんぶん赤旗」
超大型店とめた
守りたい 商店街 優良農地
商店会連合会がリード
長野市
いま、地方から超大型店を拒否する流れがおきています。長野市でも、郊外への大手スーパーイオン(千葉市)の超大型店など四店舗の出店計画に待ったをかけました。出店計画地は優良農地のため市が転用を拒否(二月七日)。歴史ある商店街を衰退させ、基盤産業の農業をつぶす開発を認めませんでした。(海老名広信)
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長野駅前から善光寺に続く参道は、瓦屋根にしっくいという趣ある商店が軒を連ねています。商店主たちは、市の判断にたいして「まずは一安心」(スポーツ店)「いい結果がでたからもっと街を活性化させなきゃ」(貴金属店)と語ります。
「この一年、大型店出店反対一色でした」というのは、洋品店を営む高橋上雄さん(44)です。長野銀座商店街振興組合の理事でもあります。高橋さんが、反対運動につき動かされたのは、イオンが進出した富山県高岡市を視察したことでした。
「ここまで寂れるのか」。“シャッター通り”となった商店街をみて息をのみ、夢中で写真を何枚も撮りました。言葉より映像のほうが、仲間に衝撃を伝えられると考えたからです。
長野市内の全店舗面積に大型店が占める割合は55%を超えています。イオンの予定開発面積二十五ヘクタール(当初計画)は、中心市街地の商店街がすっぽり入る広さ。長野商店会連合会はこの図を載せた冊子を発行し、住民に巨大さを訴えました。
「超大型店がくれば、地域店舗の経営が困難となる『オーバーストア』(店舗過剰)は明らか」と、長野商工会議所の塚田国之専務理事はイオンを厳しく批判します。
さらに、出店を野放しにした規制緩和への強い反発を語ります。
「限られた国土や市場、培ってきた文化や伝統という枠のなかで経済活動をすべきです。規制緩和は、格闘技に例えるならば、リングの外でルール無用の殺し合いをするようなものですよ」
まちづくりの問題
商店の人たちが共通して口にする言葉と思いがあります。それは「反対運動は商店のエゴではない。長野市全体のまちづくりの問題」です。
反対の理由で大きいのが「地場産業の農業をつぶすな」でした。出店計画地はいずれも「農業振興地域内農用地区域」を含み、将来にわたって保全すべき地域です。
商店主たちは「初めて農業の置かれた悲惨な現状を勉強しました」(高橋さん)。農家への共感もうまれ「農業を守れ」の訴えは、二月七日に市が農地転用を拒否する表明を後押ししました。
冊子つくり訴えて
農業にとどまらず大型店進出問題を商店主たちは調査、分析して市民に問いかけました。長野商店会連合会の冊子には、「一度つぶした農地は取り戻せない」「生活弱者、高齢者は孤立する」「交通渋滞」「税収アップにつながらない」の項目が並びます。
商工会議所も地権者、地元商業者、地元建設業者、テナント業者…の各視点から出店に反対する理由を示しました。これらの主張を、データを駆使して説得的にのべたパンフレットをつくり一万冊も普及。「圧倒的な大衆の支持をえて勝負に勝ちました」(塚田専務)
揺れる農家
後継者難・農産物自由化…
同市篠ノ井地区。長野オリンピックの開閉会式が行われたスタジアムの北に隣接する農地が、イオン出店計画予定地です。いま、名産品の桃が芽吹いています。
農家で地権者でつくる団体の幹部(76)は出店誘致にいたる苦しい胸のうちを語ります。「地権者百三十二人のうち四十代が数人、三十代は一人もいない後継者難。農産物を輸入自由化し価格補償もない国策の壁に太刀うちできない」
一方、地権者でも反対した人たちが少数ながらいます。桃農家の近藤近さん(79)と北沢康英さん(79)です。反対したのは「地権者の惨めな例をいくつも知ってるから」。
スーパーなどに土地を貸している間は収入があっても、店舗が撤退したあと、引き上がった固定資産税や相続税の支払いが困難になる人を見てきました。固定資産税の平均評価額は農地なら一平方メートルあたり百二十五円。店舗に貸すとき、宅地に転用し同二万三千円にはねあがるという試算もあります。
緊急シンポで商店街を激励
日本共産党
長野市議会では日本共産党市議団が「一貫して堂々と反対の論陣をはりました」(原田誠之市議団長)。去年六月、緊急シンポジウムを開催。県商店会連合会会長、市商工振興課長、木島日出夫元衆院議員をパネリストに、大型店の問題とまちづくりのあり方を探りました。
このシンポに向け、市議団が三週間かけて市街地の商店を一軒一軒訪問し、対話と激励をして歩きました。その数、三百軒以上。
民主団体も「大型店対策住民ネット」をつくり市や県に申し入れました。