2006年2月27日(月)「しんぶん赤旗」

主張

混合診療導入

日米財界が壊す「命の平等」


 保険証一枚で、だれでも、どんな病気でも、安心して医療が受けられる―。生存権保障を定めた憲法二五条の精神を生かした医療です。

 ところが、小泉内閣の「医療制度改革」法案は、国民に新たな負担増をおしつけるとともに、高額な医療費を請求される「混合診療」の本格的導入を盛り込んでいます。

保険外診療を拡大

 新たな負担増をとってみても、情け容赦ない仕打ちです。高齢者・重症患者への負担増で受診を抑制し、「高齢者医療制度」の創設で保険料を先々まで引き上げる仕組みをつくり、長期療養者を対象とする療養病床の大幅削減で高齢者を病院から追い出すという、国民から医療を奪う大改悪です。

 この上に、保険外診療と保険診療の併用を認める「混合診療」の本格的な導入です。法案は、これまで「差額ベッド代」など、例外的にしか認めてこなかった「混合診療」を、「高度医療技術その他」「生活療養」などに拡大します。

 これが実行されれば、新しい医療技術や新薬、手厚い治療を受けられるのは金持ちだけとなり、高い医療費を払えない人は、満足な医療から排除されてしまいます。

 公的医療保険の原則は、「必要な医療はすべて保険で行う」ことです。「混合診療」の本格的導入は、保険でかかれる医療を切り縮め、公的医療制度の土台を解体します。

 小泉内閣の医療大改悪に混合診療の本格的導入が盛り込まれた背景には、日米財界の要求があります。

 日本の財界・大企業は、「高度・先進医療も保険外サービスの対象とし、公的保険との併用を認めるべきである」(日本経団連「財政の持続可能性確保に関する提言」〇四年十二月十四日)と、具体的に要求しています。「保険料や公費負担の増嵩(ぞうすう)を抑える」ために「医療給付費(とくに老人医療費)の伸びを抑制する」とのべ、自分たちの保険料負担を軽減したいという欲望がむきだしです。日本の企業の税金と社会保険料の負担は、ヨーロッパ諸国の六―八割にすぎません。日本経団連が、企業の社会的責任も果たさずに、“個人による選択と責任”といって、国民に「自己責任」を押し付けている身勝手を許すことはできません。

 アメリカの保険業界・医療業界が日本の医療を新たなもうけ口にしようと、「混合診療」の解禁の対日圧力をかけていることは、経済産業省の「二〇〇五年日米投資イニシアティブ報告書」(二〇〇五年七月)で明らかです。米国政府が、「魅力的な企業投資の観点から、いわゆる『混合診療』の解禁」と、「営利企業による医療サービスの提供」を要請したことが明記されています。

 アメリカは全国民対象の公的医療保険がなく、営利企業による病院経営がまかりとおっています。医療費の水準は世界一でありながら、平均寿命は世界で最悪レベルです。

医療大改悪反対の一点で

 日本共産党は、「社会的連帯で医療大改悪をはね返そう」と国民へのアピールを発表しました。すべての人が安心してかかれる医療のために、(1)窓口負担の引き上げに反対し、引き下げを求める(2)保険診療が可能な医療を狭めるのではなく、充実させる(3)削減されてきた国庫負担を計画的に元に戻す―という三つの提案を行いました。

 公的保険を壊し、医療までも日米財界の食い物にする政治をただし、医療大改悪反対の一点で国民的な共同を広げていきましょう。


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