2006年2月26日(日)「しんぶん赤旗」

主張

グアム移転費負担

憲法も安保も無視する暴論だ


 麻生外相は、在沖縄米海兵隊七千人のグアム移転関係費の負担について「グアム基地が強化されることは日本全体の安全保障上の役に立つという観点も忘れちゃならぬ」とのべました(二十日衆院予算委員会)。負担を当然とする見解です。日本共産党の笠井亮議員の質問にこたえたものです。

 米国領土内での基地建設の費用を負担するなど憲法はもちろん日米安保条約さえわきまえぬ暴論です。外相見解は、米国を喜ばすだけの道理のないこじつけにすぎません。

米本国の基地建設

 米政府は、他の同盟諸国でも米軍再編を進めていますが、米軍撤退費用や米本国での再編費用を負担する国などありません。外務省も「承知していない」(河相北米局長)と類例のないことを認めています。他国がその領土で行う軍事再編のために外国が税金をだすなど主権国ならありえません。これ一つとっても、小泉政権がいかに世界に類例のない、異常な対米追随政権か明白です。

 米政府が示しているグアム基地建設費は、約七十六億ドル(約八千百三十億円)で、このうち日本の負担は五千億円ともそれ以上とも伝えられます。日本政府は、この不当な負担を強行するために、「沖縄の負担軽減」を理由にし、「七千人減るのは大きなこと」(麻生外相)などと新たな理由をもちだしています。しかし、これは事実に反しています。

 七千人がグアムに移るとしても、残るのは沖縄県民を苦しめる海兵隊地上部隊であり航空部隊です。空軍もいます。航空機の騒音、墜落の危険、米軍犯罪もなくなりません。海兵隊新鋭基地の建設で、県民の負担は大きくなるばかりです。沖縄県民をだしにするのはやめるべきです。

 米軍再編のための「中間報告」は、「太平洋における兵力構成の強化」のために「海兵隊の緊急事態へ対応能力の強化や、それらの能力のハワイ、グアム及び沖縄の間での再分配」をすると明記しています。三カ所の基地を一体的に運用することで、いつでもどこからでも海兵隊を出動させるのがねらいです。

 グアムはすでに空軍や海軍の基地となっていますが、海兵隊はこれからです。米軍は、沖縄から移転する司令部組織と支援部隊の七千人をグアム新基地運営のため必要としているのです。七千人の移転がなければ困るのは米軍です。それを、沖縄県民のためなどというのは、まったくの欺まんです。

 グアム新基地建設が「日本の安全に役立つ」という説明もうそです。志位委員長が基地問題全国交流集会(二十四日)で指摘したように、再編は海兵隊の“殴りこみ機能”を強化するものです。米海兵隊のヘイギー司令官も「イスラム教の過激な原理主義と戦うことが対テロ戦争」であり、海兵隊を沖縄、ハワイ、グアムに分散させることでインドネシア、マレーシア、バングラデシュ、インドへの展開が容易になるとのべています(昨年十一月)。

 日本のグアム基地建設費負担は、日米安保条約は「純粋に防衛的」という政府見解にも反します。

戦争促進は九条違反

 グアムの海兵隊基地建設は、対テロ戦争など先制攻撃戦争をたたかうための拠点づくりです。日本が建設費を負担するのは、日本が国連憲章違反の先制攻撃戦争を促進する立場に立つということです。

 日本国憲法で戦争放棄を国家方針としている日本として、許されることではありません。対米約束を撤回すべきです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp