2006年2月21日(火)「しんぶん赤旗」

格差拡大・負担増押しつけの小泉「改革」ストップ、国民のいのち・暮らし・雇用・営業を支える予算に

二〇〇六年度予算案の抜本的組み替えを要求する

二〇〇六年二月二十日 日本共産党国会議員団

(要旨)


 日本共産党国会議員団が二十日発表した二〇〇六年度予算案の組み替え案(要旨)は次の通りです。《全文はこちら→


 いま、格差社会と貧困の広がりが大きな問題になっている。また、耐震強度偽装事件、ライブドア事件などにみられるように、ルールとモラルの破壊がすすみ、国民の安全と財産がないがしろにされている。これらの根本には、小泉内閣がすすめてきた「構造改革」路線、規制緩和万能路線がある。小泉内閣は、五回の予算編成で十三兆円にのぼる、史上最悪の増税・負担増を庶民に押しつけた一方で、新規国債の発行額は百七十兆円にのぼる「史上最悪の借金王」になった。これは、巨大開発の無駄遣いと、大企業、大資産家への減税を温存・拡大してきたからにほかならない。

 小泉内閣は、〇六年度予算案を「改革の総仕上げ予算」と位置づけているが、これほど害悪と破たんがあらわになった政治をこれ以上つづけることは許されない。日本共産党は、小泉「改革」に終止符を打つとともに、負担増を中止し、格差拡大に歯止めをかけることなどを中心に、〇六年度予算案について、次の方向で抜本的に組み替えることを要求する。

一、小泉「構造改革」路線を転換し、貧困化と格差拡大に歯止めをかける

(1)国民負担増と社会保障改悪を中止する

 国民全体の所得が低下しているときだからこそ、国民の暮らしをささえる税・社会保障の役割はますます重要になっている。庶民増税をやめ、予算配分の重点を思い切って社会保障に移す。

 定率減税の廃止を撤回する…「景気回復」といっても、国民の生活が豊かになったわけではなく、所得は減り続けている。定率減税は「恒久的措置」として実施された。同じ法律でおこなわれた「所得税の最高税率引き下げ」や「法人税率の引き下げ」だけはそのままで、定率減税だけ廃止するというのは、まったく道理がない。このような増税はやめる。

 負担増を押しつけ、公的医療保険制度を土台からくずす「医療改革法案」を撤回する…政府の「医療改革法案」は、高齢者医療の保険料・窓口負担増、長期入院の食費、居住費の徴収、高額療養費の負担引き上げなど大きな負担増を押しつけ、混合診療など保険が利かない医療を拡大するものである。金のないものは必要な医療も受けられない、所得格差が「健康といのちの格差」になる社会にしてはならない。

 保険で安心してかかれる医療制度にするために、(1)窓口負担の引き上げをやめ、軽減する、(2)保険が対象とする医療サービスの縮小、切り捨てをやめ、拡充させる、(3)減らされてきた国庫負担を計画的に元に戻すとともに、高薬価や高額医療機器の見直しなど保険財政のムダもなくし、医療保険財政を立て直す。

 まともな年金「改革」を…基礎年金の国庫負担を二分の一までにただちに引き上げ、年金財源の基盤強化をはかるとともに、全額国庫負担による最低保障年金制度創設の実現に向かう。国会議員年金の特権をなくす。

 介護保険料の値上げを抑え、介護サービスを改善する…介護保険給付費に占める国庫負担の割合を5%引き上げることで、四月からの高齢者の保険料値上げを抑え、減免制度を拡充させる。

 障害者福祉、生活保護など社会保障の改悪を中止する…昨年、政府・与党が強行した障害者「自立支援」法によって、障害者が生きるために必要なサービスさえも受けられなくなるという危険が現実のものになろうとしている。四月からの応益負担の実施を中止し、必要な負担軽減措置をとる。

(2)安定雇用の破壊と中小企業切り捨ての政治を切り替える

 <安定した雇用と人間らしい働き方に>

 非正規雇用を拡大させる労働法制の規制緩和路線から、安定した雇用の確保を大原則とする雇用政策に転換する。非正社員への差別の禁止と賃金はじめ労働条件の格差を是正する。若者雇用対策予算を大幅に増額するとともに、職業訓練中の生活保障、安定した雇用の拡大などを抜本的に強化する。

 長時間労働・サービス残業をなくし、人間らしく働くという当たり前の条件を確保するとともに、労働時間の適正化による新規雇用の拡大をすすめる。

 <中小企業予算を大幅に増額し、経営基盤の強化を支援する>

 引き続き厳しい経営環境にある中小企業の経営基盤を強化するために、中小企業予算を大幅に増額する。乱暴な地域金融機関の統廃合や中小企業向け政府系金融機関の縮小・廃止を中止する。信用保証協会への国の補助金を増額して財政基盤を安定させる。赤字の中小企業にまで一方的に負担を押しつける、中小同族会社の役員報酬の損金算入制限は撤回する。

 政府が提出した都市計画法改定案では、大型店出店制限は限定されたものになり、問題点も多く残されている。大型店の出退店ルールは、自治体と住民の自主的な判断でできるようにする。

(3)国民の安全と財産をないがしろにする規制緩和万能路線を見直す

 ライブドア・証券市場分野…ライブドア事件の根本には「貯蓄から投資へ」の大方針のもと、マネーゲームをあおってきた小泉内閣の規制緩和万能路線がある。企業実態や企業業績などと無関係に株価つり上げを可能にする証券市場の規制緩和や証券優遇税制などを見直す。事後規制に偏重した現在の金融行政を改め、事前規制も含めた総合的規制をおこなう。預金や保険等もふくめた包括的な「金融サービス法」を制定することをはじめ、業界や金融商品のあり方、情報開示、監督・監視体制、罰則などについて、規制緩和の弊害をふまえて総合的に改善する。

 耐震強度偽装事件…政府が打ち出した被害者「救済策」は、現行制度の枠内のもので、被害者が多大な二重ローンに苦しむなど、きわめて不十分である。ヒューザーなど当事者に第一義的な責任を果たさせることは当然であるが、同時に、住宅ローンを貸し付けた金融機関、工事を請け負ったゼネコン、デベロッパーなど不動産業界の負担と協力で、被害者の負担を軽減することである。そのうえでなお不足する費用については政府が補償すべきである。

 再発防止のために、建築基準法を抜本的に見直し、建築士が建築主や施工主の言いなりにならないよう建築士法などを改正する。民間まかせの検査・確認体制を見直し、行政が検査・確認業務に実質的な責任を負えるよう体制を強化する。

(4)暮らしと国民経済の基盤強化にふみだす

 消費者・食料・農漁業…製造物責任法の挙証責任を消費者側ではなく、企業側に義務づけるとともに、消費者の団体訴権を保障し、損害賠償を請求できる制度とする。

 食の安全のため、「予防原則」にたって、食品添加物や残留農薬、遺伝子組み換え食品の安全性の検査を強化し、消費者への表示を徹底させる。

 不要な米の輸入を削減するとともに、政府の100%拠出による不足払い制度を創設する。農産物の価格・所得保障を充実させる。水産資源の保全・管理を国の責任ですすめ、漁業の振興をはかる。

 BSE問題…アメリカのずさんな対応が明るみに出た以上、アメリカに対して対日牛肉輸出の前提として全頭検査の実施や、全年齢牛の危険部位の除去、飼料規制など日本と同等のBSE対策を、再度要求する。食肉輸出国にたいする事前事後の検査体制や、輸入される食品・動物に関する水際の検疫体制も強化する。

 環境…プルサーマルなど危険な核燃料サイクル計画の推進をやめ、自然エネルギーの開発・利用を抜本的に拡大する。

 大気汚染による患者や水俣病の患者をはじめ、すべての公害被害者の救済のため、被害者の声に耳を傾け救済を本格的に急ぐ。

 災害…除雪費への国庫補助の増額や、除排雪の負担増への地方交付税のいっそうの加算、除排雪が困難な住民の支援措置を講じる。地震、風水害など被災者の生活再建のために、被災者生活再建支援法の抜本的な改正をおこなう。

 アスベスト問題…アスベスト健康被害救済法が成立したが、これはまったく不十分である。国と企業の責任を明確にし、給付水準も労災と同等にする、石綿健康被害給付基金への中小・零細事業者の拠出を軽減する――などの見直しをただちにおこなう。

 教育・子育て…教職員定数改善計画を復活させ、国の責任で三十人学級を実施する。子育ての経済的負担を軽減するため、第一子、第二子の児童手当を月額一万円に倍増する。乳幼児医療の無料化を国の制度として実施する。学童保育、子どもの安全対策のための人員配置、スクールバスなどへの財政支援措置を拡充する。児童虐待防止のため、相談窓口の整備、児童相談所職員の抜本的増員、児童諸施設の改善など体制を強化する。ヨーロッパに比べ低い文化予算の削減をやめ、増額をはかる。

(5)「三位一体の改革」の名による地方切り捨てを許さない

 小泉内閣がすすめた「三位一体の改革」は、国の責任の後退と地方財源の削減にほかならないことが明らかになった。地方自治体財政の自主性・自立性の拡大のために、財源不足を補てんする交付税率の引き上げなど、必要な交付税総額を確保する。自治体リストラの押しつけをやめ、地方財政と地方自治の拡充をはかる。

二、米軍基地再編・強化のための国民負担増を撤回し、大幅な軍縮をすすめる       

 日米両国政府は、地球的規模で先制的軍事介入能力を強める「米軍再編」の一環として、日米同盟をさらに侵略的に強化しようとしている。五兆円近い軍事費は、そのねらいを各分野で具体化するものである。

 (1)米軍基地再編にともなう自衛隊の態勢づくりにかかわる予算、(2)いわゆるミサイル防衛にかかわる予算、(3)海外派兵を主目的とした新装備、新兵器の導入のための予算、(4)米軍「思いやり」予算と沖縄基地再編費用(SACO関係経費を含む)などは全額、削除する。(5)イラク、インド洋への自衛隊派兵費用の支出もやめる。

三、庶民増税路線ではなく、税・財政のゆがみをただして、暮らし・社会保障の財源を確保する

 歳出の浪費に抜本的にメスを入れるとともに、大企業や高額所得者向けなどの優遇税制を見直し、税・財政のゆがみを改めることによって、国民の暮らしのために必要な財源を確保するとともに、将来も安心できる財政の安定化に向けた一歩を踏み出す。

 <大型公共事業、特別会計のムダなど歳出の浪費をなくす>

 採算の見込みのたたない高速道路の全面建設、関空二期工事、スーパー中枢港湾、巨大ダム事業など、社会情勢の変化や住民の反対もかえりみずに推進されている大型公共事業に抜本的にメスを入れ、ムダを改める。

 特別会計のムダの根源になっている道路特定財源や電源開発促進税などの特定財源制度をやめ、一般財源化して、社会保障などの財源にも充てられるようにする。

 防衛施設庁の談合事件などの真相を徹底解明し、浪費にメスを入れる。政党助成金は廃止する。

 <大企業・大資産家優遇税制をやめる>

 「景気がよくなった」というなら、史上空前の利益を上げ、巨額の余剰資金を抱えている大企業にこそ、もうけ相応の負担を求めるべきであり、こうした減税措置を中止する。

 株式配当や株式譲渡所得に対する減税措置は、ただちに改めるべきである。


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