2006年2月20日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

雪かきで気持ちつながった

ボランティア体験


 ことし、最大積雪量三メートル一三を記録した新潟県十日町市。一昨年の新潟中越地震で大きな被害を受けた地域です。この豪雪に、特定非営利活動法人JEN(ジェン)が募集した除雪ボランティアに参加の問い合わせが殺到しました。一月中旬から二月中旬まで五回、若者を中心に約五十人が加わっています。四回目(十―十二日)の除雪ボランティアに参加しました。(伊藤悠希)


地図

 参加者は、十日町市中条の震災被災者が入居する仮設住宅に集合しました。九人で、ほとんどが十代から三十代の青年。市によると仮設住宅には現在、三十七世帯九十八人が住んでいます。

 雪は仮設住宅をすっぽり包むほどです。雪に足をとられないようにかんじきを履いて作業開始。雪をスコップでかき出し、窓から光が入るようにします。

 午後から四人が車で池谷という集落へ向かいました。現在、人が住んでいるのは六軒のみ。車で十分ほど走ったあと降りてかんじきを履き、道なき道を歩いて行きます。

 かんじきを履くのはほとんどがはじめてです。慣れないこともあって、途中で何度もはずれてしまうことも。坂を登ってたどり着いたのは昔ながらの民家でした。

 積もった雪は二階の高さまでに。スコップでは一度にかく量が限られるため、スノーダンプを使っての作業です。かくのではなく、雪の塊を切って捨てるというやり方。この地方では「雪掘り」といいます。

 一時間ほどの作業で二階の窓が現れました。家主の曽根勉さん(53)は「ありがたい」と喜びます。

 ボランティア二日目の夜は地元の人との交流会が開かれました。雪かきの大変さや雪国で生きることの厳しさ、ボランティアについてなど、参加者は率直に意見交換。話は盛り上がり、次の日の午前四時半ころまで語り合った人もいました。

 JENと十日町市との交流は地域に活気を与えています。中条地区青少年育成協議会会長・吉村重敏さん(55)は交流が「十日町の地域、人の可能性を引き出した」と。十日町市地域おこし実行委員会代表の山本浩史さん(54)は、こう話します。「ボランティアの人と十日町の人との交流からいろんなことができる展望が見えてきた。これからが楽しみです」


参加者の感想

 青山学院大学二年生の川田茜さん(20)は、春休みを利用しての参加です。「経験したいから来ました。人のために何かをやるということは大変だけど、嫌と思って投げ出す前に何かを学びたい。自分のためになるから」

「ありがとう」がうれしかった

 高校三年生の中村郁也さん(18)=千葉県=は最年少です。受験を終え、参加しました。高校生活では野球に力を入れ、今はバンドでギターを弾いています。「三、四メートル積もった雪を見たくて。除雪してみたかった」。スノーダンプで黙々と雪をかきます。「おばあちゃんが『ありがとう』って言ってくれてうれしかった」

世代を超えた出会いが魅力

 高橋裕之さん(22)=明治学院大学=は昨年の夏、農作業ボランティアに参加。池谷での除雪の後、夏にお世話になった地元の人と再会しました。「世代を超えた出会いができることが魅力。〇五年の二月からボランティアや旅行で十日町には四回来ています。十日町と町の人たちを好きになりました。人のリピーターになったんです」

 杉山麗さん(33)は青年海外協力隊員としてパキスタンに行っていました。パキスタン地震(〇五年十月)でJICA(国際協力機構)職員の知人を失いました。新潟中越地震とパキスタン地震が重なると言います。「一つの目的に向かってみんなで力を合わせるのはいいですね。高校生や大学生がまじめにボランティアとは何か、と考えている。日本も捨てたもんじゃないです」

 中島正雄さん(29)は、昨年うつ病になり、七年半勤めた職場を辞めました。まだ、フルタイムで働く自信はありません。リハビリを兼ねてのボランティア参加と言います。「ノリで参加したけど、受け入れられたのでほっとしました。役立つことができてよかった」

仲間や相手との関係が財産に

 「この一年で大きく成長した」というのは岩上昌義さん(20)=明治学院大学=。昨年の除雪ボランティアに参加した時、「まわりがいるから自分もできる」と思うようになりました。それまで、ボランティアについては「やってあげる」という感覚がありました。「ボランティアは自分がしたいからする。相手が喜んでくれると自分もうれしいんです」。ボランティアを通してできた仲間や相手との関係は岩上さんの財産です。


 JEN(ジェン)は新潟中越地震で緊急支援をしたことから、除雪、農作業ボランティアを行ってきました。受け入れ先として、十日町市地域おこし実行委員会ができ、池谷は拠点となる場所です。


両方の気持ちかみ合ってる

参加して

 山形市出身の記者にとって雪は珍しくありません。雪かきの経験もあります。でも、市内に三、四メートルもの雪が積もっている光景を見るのは、はじめてのことです。かんじきを履いて家の二階ほどの高さに積もった雪の上に上がることもはじめて。この雪の下には何があるのだろう、想像できないほどの量です。

 雪かきで達成感を感じた次の日、一五センチほど積雪していました。地元の人は「毎日がこの繰り返し」と言います。最終日、ほとんど口を利かず無心で雪を片付けました。

 行動をともにして気付かされたことは、ボランティアとは協力と共同の活動だということです。人のために何かすることはうれしいこと。自分がしたいからする。楽しんでする―。ボランティアする側とされる側の気持ちがかみ合っているから、気持ちよくできるのだと思いました。

 筋肉痛で体は重かったのですが、心は軽く帰途につきました。


お悩みHunter

アトピーに悩み、引っ込み思案に…

アトピーで悩んでいます。人と会うことに非常に臆病(おくびょう)になってしまいます。アトピーが顔に出るため人の目がすごく気になります。もともと明るい性格だと思っているのですが、極度な引っ込み思案になっていることがなお、自分を落ち込ませます。もっと気持ちを切り替え、乗り越えていかなければと思うのですが…。(26歳、女性。静岡県)

悩みや「欠点」を成長の糧に

アトピーで悩んでおられる方は多いですね。そんなにひどくない方もいますが、やはり、アトピーを「自分の一部」「体の一部」として受けいれていくことが大切ではないかと思います。

 それぞれには、外見や容姿、内面や性格などでの悩みや「欠点」と思うことがありますね。それは他人にはなかなかわからないことなのですが。

 そういう悩みや「欠点」と向き合い、どのように折り合いをつけていくのか。これは、それぞれの人間のあり様とか、価値を決めることにもなるのだと思います。

 「欠点」があるから、だから自分は「だめ」というように“白黒思考”ではなく、それぞれが持っている悩みや「欠点」を成長の糧にし、乗り越えていく。そういう思考を身につけていくきっかけにしたらどうでしょうか。

 アトピーとずっとつきあって生きて乗り越えていけば、必ず見えてくるものがあると思います。アトピーであることがきっかけになって、新たな能力を見いだし、マイナス面を乗り越えていくことができるのだと私は思います。

 変えられない部分を受け入れる落ち着きと、変えていけるものを変える勇気――。このふたつを見分ける賢さが大切だと思います。


精神科医 上村 順子さん

 山口大学医学部卒。代々木病院、松沢病院などで勤務。99年からめだかメンタルクリニック院長。


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