2006年2月20日(月)「しんぶん赤旗」

検証 政府の「格差拡大合理化」論


 政府・与党は「格差拡大は小泉内閣からではない」などと小泉「改革」の結果、社会的格差が広がったとの議論を打ち消すのに躍起です。改めて小泉内閣の「格差拡大合理化」論を検証してみました。


“小泉内閣からではない”

「構造改革」で広がった

図

 「小泉改革だから格差拡大とはならない」(自民党・武部勤幹事長)「小泉内閣から(格差拡大が)始まったわけではない」(公明党・冬柴鉄三幹事長)。与党はこういって、批判をかわそうとしています。格差拡大を否定できなくなって持ち出してきた開き直りの議論です。

 社会の貧富の格差をあらわすジニ係数は、一九八〇年度あたりを境に減少から増加に転じ、上昇を続けています。

 問題は、小泉「構造改革」が所得格差をいっそう広げて、耐えがたいものにしてきた事実です。

 財務省の法人企業統計調査によると、小泉内閣発足前の二〇〇〇年度から〇四年度にかけて、資本金十億円以上の大企業の経常利益は、約六・四兆円伸びています。これに伴い、役員報酬・配当も約一・九兆円アップしました。しかし、従業員給与は約二・五兆円のマイナスです。

 正社員の平均年収は年間二十二万円ダウンしています。この間、正規雇用から非正規雇用への置き換えが進み、非正規雇用の割合は、二〇〇〇年度の26・0%から、〇五年七―九月期には32・9%へと増加して過去最高になっています。

 産業再生法(一九九九年成立・施行、〇三年に改悪・延長)などでリストラを促進したうえ、労働者派遣法の改悪(九九年に原則自由化、〇四年改悪で製造、医療業務に拡大)など労働分野での規制緩和をすすめてきた小泉「改革」の結果です。

“「貧しき者」引き上げる”

生活保護世帯100万超す

 自民党の中川秀直政調会長は六日の衆院予算委員会で、イギリスのチャーチル元首相の言葉だとして“社会主義は富める者をひきずりおろすが、自由主義は貧しき者を引き上げる”とのべました。

 しかし、引き上げるどころか「貧しき者」をたたき落としてきたのが、小泉「構造改革」です。

 総務省の「家計調査年報」によると、勤労者世帯の年収を十段階に分けた一番下の階層(最下10%)では、一世帯(平均約三人)の平均収入が三百四十二万円(二〇〇〇年)から三百四万九千円(二〇〇四年)にまで落ち込んでいます。

 専修大学の唐鎌(からかま)直義教授は、生活保護基準との対比で、これらの人々は「誰がどこから見ても公的貧乏線以下の生活を送っている」(『「福死国家」に立ち向かう』 新日本出版社刊)と指摘しています。小泉政権下で生活保護世帯が百万世帯を突破したことの背景の一つがここにあります。

 全世帯に占める生活保護の割合は1・6%。全世帯での要保護世帯の発生率を、10%程度と仮定すると、生活保護を必要とする貧困世帯のうち、約85%が保護を受けずにいるということになります。

 社会保障、労働法制のさらなる改悪に加え、消費税の税率の大幅なアップを推し進める「構造改革」で、どうして“貧しき者を引き上げる”ことができるのでしょうか?

“改革加速こそ解決方法”

弱者襲う改悪・負担増

 政府・与党は「改革の加速化こそが諸問題の唯一の解決方法だ」(中川秀直自民党政調会長、六日の衆院予算委員会)と主張しています。とんでもないすりかえです。

 格差拡大の一番の要因は、人間らしい雇用の破壊です。大企業・財界はリストラと新規採用の抑制で正規雇用を減らし、パートタイマーや派遣、業務請負など非正規雇用を激増させてきました。この不安定な雇用形態で賃金は低く抑えつけられ、社会保障制度からも排除される労働者が増え、所得の格差が広がっているのです。

 小泉内閣は発足当初から「労働市場の構造改革」の名で、不安定雇用を急増させる労働法制の改悪を進めてきました。

 政府・与党が掲げるこれからの「改革メニュー」をみれば、格差をいっそう拡大させることは明らかです。

 雇用分野では、使用者がホワイトカラー労働者を「一日八時間、一週四十時間」という労働基準法の枠外におくホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入も狙っています。この制度が導入されれば、労働者を無制限に働かせることができ、残業代も深夜勤手当も不要となります。

 高齢者を中心に負担増を迫る医療制度の改悪は、公的医療制度を土台から崩し、人の命にまで格差を持ち込むやり方です。

 税制では、二〇〇七年度の「税制抜本改正」の中で消費税増税を狙い、税率10%が当然のように取りざたされています。消費税増税となれば、所得の少ない人、社会的弱者に容赦なく襲いかかり、いっそう格差を広げることになります。


ジニ係数 統計上の指数で、0から1の間にあり、数値が高くなればなるほど所得の不平等度が大きいことを示す。


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