2006年2月19日(日)「しんぶん赤旗」

定年延びたが賃金半減

「全員雇用」名ばかり

4月から「65歳まで」義務づけなのに


 厚生年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、六十五歳までの雇用継続をすべての企業に義務付ける「改正高年齢者雇用安定法」が四月から施行されます。ところが、これに逆行する五十五歳定年を導入したり、安定した生活ができない低賃金を押しつけるケースが、大企業を中心に広がっていることが分かりました。全国労働組合総連合(全労連)と国民春闘共闘委員会が百三十九社について調査したものです。

春闘共闘委と全労連が調査

 主要六十一社のうち、「希望者全員の雇用」や「生計維持」という法律の趣旨に背くような制度を十五社(25%)が計画していました。

 日本IBMは、五十五歳で「定年扱い退職」とし一年契約の社員として雇用。契約更新には五段階の業績評価を設け上位三位までの評価が必要で最悪の場合五十六歳で契約打ち切りもあります。

 「業績・能力評価」などを使った選別雇用が目立ちます。JR東日本では、十月と十二月の二回も採用試験を実施し、対象者を絞り込みます。

 光学機器のコシナは、「献血を2回以上おこなった人」「ラジオ体操を意欲的に行う人」など二十一項目もの選任基準を「すべて満足する者」と規定。多くが不採用となりかねない内容です。

 高齢者雇用安定法では「希望者全員の雇用」を原則としながら、これに反対する財界・大企業の意向を受けて、労使協定を結べば企業が必要とする労働者だけを継続雇用できる仕組みを盛り込みました。これが選別雇用の温床となっています。

 賃金水準は、フルタイムでも多くが二十万円台。六十歳時の賃金水準と比べて民間で50%〜70%、公務で40〜50%と大幅ダウンとなっています。NTTでは、契約社員となる時給は八百七十五円と最低賃金水準しか保障されません。

 また、仕事の内容については「同一の職場」が多数ですが、JR東日本やNTT東・西では、本体での雇用延長はなく子会社で雇用するため職種や勤務地の変更を余儀なくされ、六十五歳まで働き続けるうえで困難を伴うケースも出ています。

法に従い指導して 厚労省に要求

 全労連と国民春闘共闘は十六日、厚生労働省高齢者雇用対策課にたいして、「希望者全員雇用」「生計維持」という法の趣旨に従って企業への指導・監督を求めました。日本共産党の小池晃参院議員と高橋千鶴子衆院議員が同席しました。

 厚労省側は調査し必要なら労働局とも連携して取り組むと答えました。


 企業名 選任基準などの主な問題点(全労連調べ)

 日本IBM 55歳定年。1年契約で打ち切りあり

 JR東日本 子会社に丸投げ。2回の入社試験

 NTT   地域子会社に丸投げ。時給875円

 コシナ   21項目すべてを満たす者だけ雇用

 文祥堂   2年間の成績・能力ともにA以上

 東映    本人希望か会社希望かで差別的労働条件

 支払基金  業務に不要な資格取得。月収8万4000円

 油研工業  職務・業務が存在することが前提

 SMK   3年間で評価7点以上。労組員は最高でも6点しかとれないのが現状

 日新興業  子会社に丸投げ。査定Cランク以上


 高年齢者雇用安定法 2004年6月の年金改悪とセットで改定。年金支給開始年齢の引き上げに応じて、65歳まで働き続けられるように(1)定年の延長(2)継続雇用制度の導入(3)定年制の廃止――のいずれかを導入するよう企業主に義務付けました。労働者や事業主への補助金もあります。


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